最新記事

日本文化

利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「和輪庵」

2019年5月21日(火)19時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

――悟りを開けば安心立命の境地に至り、そこが極楽浄土というわけです。その極楽浄土に渡る方法として、御釈迦様は『六波羅蜜(ろくはらみつ)』という修行をせよと説いておられます。

「布施」人を助ける行為、「持戒」戒律を守ること、「精進」一生懸命働くこと、「忍辱(にんにく)」耐え忍ぶこと、「禅定(ぜんじょう)」座禅を組む(心を静める)、その修行の最後に「智慧」に至るそうです。森羅万象を支配する宇宙の根本原理を知る、つまり悟りに至るわけです。この六波羅蜜を心がけ、一生をかけて人格を磨いていくことが大事だそうです。

なかでも「精進」努力を惜しまず一生懸命働くことが、基本的で重要です。「ものを成し遂げる」というのは、楽な方向ではなく、誠心誠意の努力、苦労を厭わないことが大切なのだそうです。

『京セラフィロソフィ』の中でも独特で、庭のテーマともなっている「利他主義」を紹介したいと思います。

――私たちの心には「自分だけがよければいい」と考える利己の心と、「自分を犠牲にしても他の人を助けよう」とする利他の心があります。利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので、誰の協力も得られません。自分中心ですから視野も狭くなり、間違った判断をしてしまいます。一方、利他の心で判断すると「人によかれ」という心ですから、まわりの人みんなが協力してくれます。また視野も広くなるので、正しい判断ができるのです。より良い仕事をしていくためには、自分だけのことを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他の心」に立って判断をすべきです。――

リーダーの資質

稲盛和夫は経営者の勉強会「盛和塾」の塾長を務め、たくさんの経営者に支持されています。中国でも稲盛和夫は大変人気で、勉強会の盛和塾では、3000〜4000人の人々が集まるそうです。

稲盛は、中国の経営者には、金持ちになりたいという欲望が原動力の利益追求型のきつい人間性の経営者が多いが、それだけではダメで、利他の心が大切だと説いています。多くの参加者が、稲盛に賛同していました。利他の心があると、会社は強くなり安定すると語っているのが印象的でした。

稲盛和夫は、人生を三期に分けて考えて、60歳頃からの第三期を、死ぬための準備期間として考えているそうです。その準備の一つが得度です。65歳で圓福寺で得度しましたが、その直前には、胃にガンが見つかって手術をしたそうです。

厳しく辛い托鉢の修行もしていたというのは驚きです。仏教的な思想では、魂は輪廻転生で、良きことを思い行うことで、魂を磨きあげるのが意義のある人生だそうです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日・EUなどとの貿易協定「解消」も、関税裁判敗訴な

ビジネス

米経済活動、大半でほぼ変化なし 物価上昇は緩やか=

ビジネス

米7月求人件数、17.6万件減 失業者数が求人数を

ワールド

プーチン氏「良識働けば協議で戦争終結」、 交渉不調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中