最新記事

日本文化

利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「和輪庵」

2019年5月21日(火)19時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Science History Institute [CC BY-SA 3.0]

<訪日外国人にも人気の日本庭園。なぜ歴史に名を残した人たちが日本庭園にたどり着くかを考えると、その見方も変わってくる。稲盛和夫が創設した京都賞の受賞者が招かれる和輪庵にはどんな意味が込められているのか>


自然の景観を人工的に構成した日本の造形空間。基本的には観賞や散策などのため住居の周囲に樹木や石を配置し,築山や泉池などを築く(ブリタニカ国際大百科事典より)。

これが、日本庭園だ。古くは『日本書紀』や『万葉集』にも庭園の記述があるとされるが、平安時代以降、日本各地に造られてきた。金沢の兼六園や岡山の後楽園、水戸の偕楽園など、人々を魅了する日本庭園は各地にあるが、訪れるのは日本人だけではない。

英語・フランス語の通訳を行い、京都を中心に庭園ガイドをしている生島あゆみ氏によると、アメリカ、オーストラリア、フランス、オランダ、イギリス、スウェーデン、イスラエルなど、案内する外国人の国籍はさまざま。その職業も、会社社長から弁護士、医師、建築家、カメラマン、画家、アーティストまで、多種多様だ。

実際、Japanese gardens(日本庭園)に関する英語の情報はインターネットにあふれており、アメリカには日本庭園の専門誌まである。今や日本庭園は、日本を訪れる外国人にとって外せない「見るべきもの」となっているのだ。

個人の旅行者向けに「ガーデンスペシャルガイドツアー」を行っているという生島氏はこのたび、「なぜ、一流とされる人たち、歴史に名を残した人たちは、日本庭園にたどり着くのか」をテーマに執筆。『一流と日本庭園』(CCCメディアハウス)を刊行した。

庭園そのものだけでなく、それらを造った人物、深い関わりのある人物の人生を見つめた上で、庭園との結びつきを読み解いた。これ1冊で日本庭園の見方・楽しみ方が変わるというユニークな一冊だ。

足利義満は金閣寺を、稲盛和夫は和輪庵を造った。スティーブ・ジョブズは西芳寺に、デヴィッド・ボウイは正伝寺に通った。ここでは本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。

◇ ◇ ◇

稲盛和夫(1932年〜)と
和輪庵(わりんあん)(京都)

稲盛が創設した京都賞の受賞者が、招かれる庭として話題の和輪庵。経済界を牽引する稲盛和夫の世界観が集約され、京セラ迎賓館としての役割を担う。

稲盛和夫フィロソフィ

京セラフィロソフィは、「人間として何が正しいのか」、「人間は何のために生きるのか」という根本的な問いに(稲森和夫が)真面目に向き合い、京セラを今日まで発展させた経営哲学です。稲盛が、「京セラを経営していく中で、私は様々な困難に遭遇し苦しみながらもこれらを乗り越えてきました。その時々に、仕事について、また人生について自問自答する中から生まれてきたのが京セラフィロソフィです」と、公式サイトで説明しています。

『京セラフィロソフィ』(稲盛和夫著)は、あまりにも有名ですね。同書の中で、私が最も興味を持ったのは「京セラフィロソフィ」のほかに、「六波羅蜜」について語っている箇所です。「六波羅蜜」とは、「彼岸に至る」までの6つの修行のことです。御釈迦様は、人生の究極の目的は、悟りを開くということであり、その悟りの境地が、彼岸に至ることだと説かれました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロサンゼルスで移民の抗議活動、トランプ政権が州兵派

ワールド

コロンビア大統領選の候補者、銃撃される 容疑者逮捕

ビジネス

CPIや通商・財政政策に注目、最高値視野=今週の米

ワールド

マスク氏との関係終わった、民主に献金なら「深刻な結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 10
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中