最新記事

メンタルヘルス

うつ病と燃え尽き症候群はまったく違うのに、見当違いな治療が蔓延している

2020年11月11日(水)16時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

book20201111ochikomiyasui-top.jpg

kitzcorner-iStock.

従来の(そして現在でも多く行われている)治療では、そうした本当の原因を突き止めようとせず、ただ症状だけを抑え込もうとする。だが、それでは家が火事になって燃えているときに、煙探知機の警報音だけをオフにするようなものだと著者は指摘する。

あなたは悲観主義か完璧主義か――うつと燃え尽き症候群の違い

著者によれば、うつ症状でカウンセリングに来る人は、2つのグループに分けられる。一方は、うつ病の人。もう一方は、燃え尽き症候群を経てうつになった人だ。この違いを見ずに薬だけを処方する医師もいるが、著者曰く、これは早期回復の極めて重要な手がかりだ。

いきなりうつになる人と、燃え尽き症候群からうつになる人とでは、考え方がまったく違うという。前者は、根拠のない悲観的な考え方を意図的にする傾向にあり、後者は、どちらかと言えば完璧主義。なかには、これら2つの要素を同じくらい持つ人もいる。

意図的な悲観主義になってしまうのは、過去の経験から前向きな考え方ができないからだ。ある期間は仕方がないとしても、それが長く続くと、脳はネガティブな思考ばかりが得意になり、ポジティブに考える力が低下してしまう。脳の構造から変わってしまうのだ。

一方、完璧主義者はいつも「時間が足りない」と感じている。そうやって自分を追い込んだ結果、やがて燃え尽きる。だから、そこからうつに移行することには、実は重要な役割がある。このうつは、言ってみれば、心身を強制的に休ませるための「緊急停止スイッチ」なのだ。

うつ病には、このように燃え尽き症候群の結果として起きるものが多いと著者は説明する。燃え尽き症候群には抗うつ薬は効果がないどころか、むしろ回復を遅らせる。重要なのは、そうなってしまった原因を知ることであり、多くの場合、それは「思い違い」なのだという。

ただし、燃え尽きてうつになる→うつの間に回復→また燃え尽きてうつになる......というサイクルを繰り返すと、双極性障害(いわゆる躁うつ病)になる。ダヴィンチ、ナポレオン、チャーチル、リンカーンなど、この障害を持っていたとされる偉人は多い。

近年うつ病が増加している要因は「抗うつ薬」にある?

うつ病や燃え尽き症候群の原因は多岐にわたっており、精神的なものだけでなく、身体の不調から来ている場合や、何らかの栄養素や薬、アルコールが影響していることもある。本書では、それぞれの原因に合わせて、そこから抜け出すためのヒントが紹介されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中