最新記事

キャリア

定年後、人気講師となり海外居住 可能にしたのは「包丁研ぎ」ノウハウだった

2020年6月21日(日)16時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「B級包丁研ぎ講座」を教える豊住久氏(69歳) 撮影:尾島翔太

<定年後の生活をどう楽しむか、金銭面の不安をどう解消するか。ここに、独学で身に付けたスキルを生かして活躍する69歳の男性がいる。講師として月15万円ほどを得て、マレーシアにロングステイする生活。それを実現させた凄い「包丁研ぎ」とは?>

「定年後も何かわくわくするようなことがしたい」

そんなふうに考えている人は少なくないだろう。定年退職後の現在、スキルシェアサービス「ストアカ」で、講師として家庭用包丁の研ぎ方を教えている豊住久氏(69歳)もその1人だ。

「ストアカ」とは、個人がスキルを教授する講座を開設し、ウェブ上で参加者を募るサービス。講座の時間や開催場所、受講料の価格、教える内容もすべて開催者が設定し、生徒となる一般顧客が受講を申し込むシステムになっている。

豊住氏の講座はその中でも、定員4人の講座がほとんど毎回満員となり、累計受講者数が1400人を超える人気講座だ。講座からの収入は月に15万円ほどだという。

人生100年時代と言われるが、豊住氏の定年後の生き方が理想的なのは、好きなことや自分のスキルが仕事につながっていることだけではない。

毎年、年間を通して5カ月間ほどマレーシアでロングステイをしているのだ。そこを拠点に、旅行がてらオーストラリアのゴールドコーストへも出向き、日本だけでなく、マレーシア、オーストラリアの両国でも包丁研ぎを教えている。

現役会社員を引退した後も「包丁研ぎ」というひとつのスキルを武器にワールドワイドに活躍しているのである。

そんな豊住氏はこのたび、その人気講座の内容を『ムズかしい"技術"をはぶいた 包丁研ぎのススメ』(CCCメディアハウス)として書籍化し刊行した。

所要時間は初めてでも30分、慣れてしまえば10分ほどで、道具は5000円前後でそろう。覚える動作と知識も必要最小限。目標は「家庭用包丁を気持ちいい切れ味にする」というシンプルなもので、豊住氏は「B級包丁研ぎ講座」と呼んでいる。

knifesharpningbook20200621-2.png

切れる包丁と切れない包丁はこんなに違う(『ムズかしい"技術"をはぶいた 包丁研ぎのススメ』12~13ページ)

とんかつのクレームをきっかけに、独自のノウハウを生み出した

包丁研ぎの人気講師として活躍する豊住氏だが、もともと包丁研ぎの職人だったわけではない。それどころか、包丁研ぎに目覚めたのは45歳になってからだという。

豊住氏は現役会社員時代、某ファミリーレストランで店舗全体の管理責任者と地区の営業責任者を務めていた。

ある時、客から「とんかつの衣がいつもはがれている」というクレームを受け、その原因が「切れない包丁」にあることに気付く。そして独学で包丁研ぎの技術を身に付け、店舗のアルバイトにも実践できるよう、簡単に切れる包丁を研ぐことができる独自のノウハウを生み出した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ノボ、米で「ウゴービ」値下げ CEO「経口薬に全力

ビジネス

米シェブロン、ルクオイルのロシア国外資産買収を検討

ビジネス

FRBウォラー理事、12月利下げを支持 「労働市場

ワールド

米下院、エプスタイン文書公開巡り18日にも採決 可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中