最新記事
メンタルヘルス

ウォーキングは、脳を活性化させ、ストレスを低下させ、つながりを感じさせる

2020年3月11日(水)16時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

写真はイメージ gbh007-iStock

<欧米で注目の「ウォーキング・セラピー」。その第一人者である臨床心理士のジョナサン・ホーバンによれば、自然の中を歩くことには、心理面、身体面、スピリチュアルな面で3つの効果がある>

自然の中を歩くことで、ストレスや不安、さらには依存症、うつ病までも軽減される。それがいま欧米で注目を集めている心理療法、「ウォーキング・セラピー」だ。

2014年に診療所「ウォーキング・セラピー・ロンドン」を開設した第一人者、臨床心理士のジョナサン・ホーバンは、ウォーキング・セラピーの指南書『ウォーキング・セラピー ストレス・不安・うつ・悪習慣を自分で断ち切る』(井口景子・訳、CCCメディアハウス)を上梓。『Walk With Your Wolf』という原題にある通り、同書では「狼」が重要なキーワードとして扱われる。


 人間は皆、野性の本能を秘めた動物であり、狼はそんな人間の二面性を表す最高のメタファー(比喩)です。まず狼は人間の持つ野性と危険性、そして深く暗い感情への恐怖心を体現しています。(中略)その一方で、狼は群れに忠実で、コミュニケーションを大切する極めて社会的な動物でもあります。(中略)人間が素のままの自分でいられる空間を必要とするように、狼にも自由にうろつくためのスペースが必要です。檻(おり)に捕らわれ、狭い環境に置かれた狼は狩りの本能を失い、ストレスを募らせ、野生の環境ではありえないほど警戒心を強めます。(17~18ページより)

原題が意味する「内なる狼と歩く」とはどういうことなのか。同書から一部を抜粋し、3回にわたって掲載するシリーズの第2回では、ウォーキング・セラピーがもたらす3つの効果を紹介する。

※抜粋第1回:欧米で注目を集める「歩くだけ」心理療法、ウォーキング・セラピーとは何か

◇ ◇ ◇

狼もいきなり獲物に突進するわけではありません。じっと待ち、襲いかかる最善のタイミングを探ります。

すでに多大なストレスを抱えているあなたには、現時点では大きな決断をする余力がないかもしれません。ですから、当面の目標はスモールステップを1つずつ進むためのルーティンづくり。その上で、ウォーキング・セラピーについて具体的に検討していきましょう。このプロセスで留意すべきは、あなた自身の次の3つの側面です。

・心理面
・身体面
・スピリチュアルな面

この3つはどれも良好なメンタルヘルスを維持するのに不可欠な要素で、チームのように互いに影響し合いながらバランス感覚や健康状態を高めてくれます。この3つの側面について、ウォーキング・セラピーがもたらす効果をもう少し詳しく見ていきましょう。

心理面の効果

ウォーキング中の脳の働きは、体の動きと連動しています。長時間座っていると、屋外で動いているときと比べて認知機能の働きがはるかに鈍くなります。動物の脳にとって、座っている状態は食事か、睡眠か、毛づくろいしているかを意味するからです。一方、歩いている状態は「神経を張りめぐらせて、狩りをしている」と認識され、脳の働きが活性化します。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中