最新記事

語学

英語は「複雑で覚えにくい」、pleaseで失礼になることもある

2019年4月7日(日)10時00分
森田優介(本誌記者)

Avosb-iStock.

<日本には英語という言語に対する誤解がある。世界では「新しい形のグローバル英語」が標準になってきている。両者をつなぐキーワードは「品格」だ>

「日本には、『英語はストレートな言葉で、大雑把な表現が多い。繊細さや品の良さとは程遠い言語だ』というような『伝説』が存在する」と、在米日系企業の手助けなどを業務とする経営コンサルタント、ロッシェル・カップは言う。

カップは2017年、国際ジャーナリストの大野和基との共著『英語の品格』(集英社インターナショナル)を上梓。日本人の英語にありがちな間違いを指摘し、自然で本物の英語を身につけるための考え方と具体例を提供している。

その序文でカップは、本来「英語はとても複雑で覚えにくい言語」だと説明する。「様々な言語が混じり合ってできたものなので例外が多く、一貫したルールが少ないのです。そして、多くの単語の綴りは暗記以外に覚える方法はありません(アメリカの小学生もとても苦労します)」

「ただ、英語は単に難しいだけではなく、明確でありながら、微妙なニュアンスを伝えることもできるので、コミュニケーションにはうってつけの言語だということも強調しておく必要があります。英語が世界のビジネス言語になったのは偶然も作用したとよく言われていますが、柔軟で応用性があるからこそ世界中の人々に話されるようになったことも忘れてはいけないと思います」

そんなことを言われたら、ますます英語嫌いになるだけ――そう思うだろうか。

確かに、「とても複雑で覚えにくい」と言われると、ひるんでしまう英語学習者は多いかもしれない。しかし、なにもネイティブ話者と同じレベルの英語を、全ての日本人が習得しなくてはならないと言っているわけではない。実際、カップと大野によるこの本は、ネイティブ並みでなければならないと説くものではなく、対象読者もおそらく中級以上の英語学習者だろう。

序文にはこうある。「最初はたどたどしくとも、上品で丁寧な英語の習得を目指すべきです。流暢にペラペラ喋ることが目的ではないのです」

この本が、本誌4月9日号の特集「日本人が知らない 品格の英語」の出発点になった。

ロンドンでウィリアム・アンダーヒルに、東京で井口景子に取材してもらうと、英語業界の興味深いトレンドが浮かび上がった。2010年頃にブームを巻き起こした簡易版英語「グロービッシュ」は、日本でもうその名を聞かなくなっただけでなく、世界的に見ても消え去っていた。

特集の記事「日本人が知らない『品格の英語』──英語は3語で伝わりません」(ウェブ版はこちら)の中で、イギリスの著名な言語学者デービッド・クリスタルはこうコメントしている。「それ以前のあらゆる簡易版英語の試みと同じくグロービッシュは機能しなかった。日常会話で使われる表現を過小評価している。ビジネスコミュニケーションに至っては話にならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中