最新記事

日本

原研哉らが考える、コロナ後の「インバウンド復活」日本観光業に必要なもの

2022年5月26日(木)11時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

コロナ後の日本のインバウンド

日本へのインバウンドは、2009年から2019年の10年間で、670万人から3200万人まで伸び、およそ4.5倍に増えた。2020年の東京オリンピックの訪日客の期待もあり、2030年には6000万人にまで増加すると予測されていた。

コロナ禍で一時小休止となったが、インバウンドの総量は2024年には2019年のレベルに戻ると言われており、2030年に6000万人の外国人観光客が日本を訪れるという予測もおそらく変わらないとされる。

しかし、それを受け入れる日本の観光産業の質はどうか。

コロナ以前からも、人気観光地が過度に混雑し、地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」が指摘されていた。単にたくさんの外国人観光客が来ればいいというわけではない。むしろ、少なく来てより多く消費してもらうことが、今後の観光産業としては重要になってくる。

つまり、オーバーツーリズムに陥らないために、少ない観光客でも雇用を守りながら、その土地のポテンシャルをマックス値まで引き出すことが求められているのだ。

本書ではそうした観点から、厳島の「蔵宿 いろは」をどう再生していくのか、厳島の歴史、トランスポーテーション、建築、ツーリズム、文化の側面から様々な議論が展開される。そして最後に、3チームに分かれた会議メンバーがそれぞれの構想をプレゼンテーションする。

「神の島に泊まる」というコンセプトから、「陸のガンツウ」への道筋のつけ方、「ふろとすし」の宿といった具体的な提案まで――。本書に詳述されたこれらの構想は、もちろん実践を見据えた改善プランである。

日本列島の価値を創造する

日本の国土の67%は山林だ。列島全体がジオパークといっても過言ではない場所で、自然景観をどのように活用していくべきか。

原は、「新しい移動のネットワークを構築し、列島全体に散在する日本独自の自然を有する場所をつなぎ合わせ、これまで想像もつかなかったバリューのチェーンを作ることもできるのではないか」と語る。

気候、風土、文化、食という世界共通の観光資源の面で、日本には高いポテンシャルがある。その資源の質は、国内人口よりインバウンドの数が上回る観光大国フランスにも劣らないはずだ。

しかし戦後75年間、製造業一辺倒でやってきた日本は、そんな観光資源を十分に活用しているとは言い難い。

原は2019年7月から始めた個人ウェブサイト「低空飛行」で、自ら日本各地に足を運び、そこで感じ取ったことを文章と映像、写真で紹介している。日本中を津々浦々動き回る「低空飛行」プロジェクトの一環で、原は島根県の隠岐島を訪れている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部閉鎖始まる、党派対立でつなぎ予算不

ビジネス

日産が「エクステラ」復活と売れ筋2車種の強化検討、

ワールド

G7財務相、ロシアへの圧力強める姿勢を共有=加藤財

ビジネス

米ADP民間雇用、9月ー3.2万人で予想に反し減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 5
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中