最新記事

知っておきたい外資系の流儀

日本企業と外資系企業――2つの文化を経験した著者が語る外資系の上手な渡り方

2012年11月13日(火)13時21分
大橋 希(本誌記者)

      中間管理職 自分が外資系で出世できなかった訳も知りたかった、と言う佐藤

 ばりばり働いてものすごい額のボーナスをもらう。徹底的な成果主義で、頻繁に転職をする......そんなイメージの外資系企業で生き残るために知っておくべき心構えは? 日本企業とはちょっと違う、でも意外に泥臭いのが外資系のルールだ。

 NHKを退職してアメリカでMBAを取得した後、帰国して外資系のボストンコンサルティンググループ(BCG)とテレビ局で働いた佐藤智恵(42)は、自らの経験と外資系で働く人々への取材を基に『外資系の流儀』(新潮社)をまとめた。外資系にはどんな人が向いていて、どこが日本企業と違うのか。本誌・大橋希が話を聞いた。

──今回さまざまな人に取材をして改めて発見したことはあるか。

 とにかく発見だらけだった。BCGと外資系テレビ局は少し特殊な業種で、日本で働いている従業員もそれほど多くない。外資系企業についての本を書くにあたってはゴールドマン・サックス、IBM、マイクロソフト、アップル、サムスン、GE、アディダス、スターバックスなど、日本で関心が高い企業をなるべく多く取材するよう心掛けた。

 私は外資系でそんなに出世したわけではないので、なぜ自分が「永遠の中間管理職」だったのかを見つけたい気持ちもあった。その視点から話を聞いてみると、「英文メールの内容には細心の注意を払わなくてはいけない」「長時間労働は成功の必須条件」「日本支社からの海外転勤はどこも至難の業」「たとえ同僚との飲み会でも、会社の悪口は言っちゃいけない」など、そうだったのか! と気付いたことがいっぱいあった。

 上司に逆らってはいけないとか、ものすごく基本的な点も私は知らなかった。正論を吐いて上司とぶつかることもあったが、日本の組織で育った私は「上司は器の大きな父親のような存在」だと信じて疑わず、「温かい目で育ててくれる」と思っていた。今考えるとバカなことをしていた。上司はお父さんではなく、「鬼軍曹」だったのです(笑)。それでは出世はしませんよ、と内永ゆか子さん(元日本IBM専務でベルリッツコーポレーションCEO)なんかに言われちゃったら、ああそうだったんだ......と。

──外資系企業と日本企業の大きな違いは。

 日本企業の論理と、グローバル企業の論理はまったく違う。日本企業は国を背負っているが、グローバル企業は国を背負っておらず、世界全体で1つの国=企業とみなす。国を排除したところでどんなことができるのか、お金という共通言語を使って何を発展させていけるのかと考える。そこが日本企業と違う。

──取材をしたほとんどの人が「苦労もしたが外資で働いてよかった」と言ったとか。弱さを見せられないゆえの負け惜しみではない?

 やはり学んだことが多かったから、辛かったけれど良かった、ということなのだと思う。もちろん「もうこりごり」と言う人もいた。でもあの体験がなかったら、今いる日本企業のよさが分からなかったという人もいる。

 外資系で働いている人は日本全体の従業者の1%くらい。例えば、秘書・アシスタントの世界でも、大手外資系企業出身者は「あの有名なグローバル企業で鍛えられた人」ということで、転職する際にとても箔がつく。王様のような外国人社長の社長秘書だと、それこそ24時間態勢で、プライベートで行くコンサートのチケットを取ったり、レストランの駐車場を探したり、何でもやらなくてはいけないが、そういう人に聞いてみても、ものすごく貴重な体験だったと言う。私自身の体験を振り返っても、特にBCGに在籍した2年間は信じられないぐらい自分の能力が急成長したので、今でも本当に感謝している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中