コラム

「2国家解決」は幻想だったのか?...「10月7日」から振り返る、イスラエルとパレスチナの「終わりなき混沌の歴史」

2025年05月06日(火)10時30分
イスラエルの空爆で破壊された住宅で負傷者を捜索する人たち

イスラエルの空爆で破壊された住宅で負傷者を捜索する人たち(今年4月、ガザ北部)MAHMOUD ISSAーREUTERS

<ガザ攻撃で長年の争いはさらなる袋小路に...イスラエルとパレスチナだけで紛争を解決することはもはや不可能>

中東情勢は2023年10月7日、大きな分岐点を迎えた。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに大規模な越境攻撃を仕掛け、ガザ戦争が勃発したのだ。

ガザの死者数は5万人を超え、イスラエルは一時、200人以上を人質に取られた。


 

イスラエルは大規模な報復攻撃を展開し、2023年11月と2025年1月の2度の一時停戦を挟み、現在も攻撃を続けている。イスラエル人とパレスチナ人は相互不信に陥り、和平に向けた歩みは見通せない。

パレスチナ問題の起源は諸説あるが、大きな出来事の1つは1948年のイスラエル建国だ。第2次大戦中のヨーロッパで600万人とされるユダヤ人が虐殺されたホロコーストを機に、ユダヤ人国家建設を求める声が国際的に高まった。

現在のイスラエル・パレスチナ領土を統治していたイギリスは1947年2月、パレスチナ統治を国連に委ねると宣言。11月には国連総会で土地を2分割する「パレスチナ分割決議」が採択され、イギリスは1948年5月に統治を終了、イスラエルが独立を宣言した。

これにアラブ側が反発して第1次中東戦争が勃発。勝利したイスラエルが現在の領土の基礎となる部分を獲得した一方、70万人のパレスチナ人が住む場所を追われて難民となった(パレスチナ人はこれを、アラビア語で大惨事を意味する「ナクバ」と呼ぶ)。

イスラエルは1967年の第3次中東戦争でも領土を広げ、現在のガザやヨルダン川西岸などを占領した。その抵抗運動として発足したのがハマスだ。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。中東を拠点に取材活動を行なっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国大型連休の国内旅行支出8%増、1人当たりはコロ

ワールド

パキスタンがミサイル実験、インドは一部州に模擬訓練

ワールド

豪家計支出、3月は前月比-0.3% 予想外のマイナ

ワールド

米政権、ハーバード大への新たな助成金を凍結 対立激
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 3
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どちらが高い地位」?...比較動画が話題に
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    背を向け逃げる男性をホッキョクグマが猛追...北極圏…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 6
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 7
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 6
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story