コラム

新型コロナ:中国「新規感染者数ゼロ」の怪

2020年03月19日(木)19時00分

新型肺炎のため武漢につくられた臨時病院の撤収作業をする作業員(3月8日)REUTERS-China Daily

<中国の新型コロナウイルスの新規感染者がついにゼロになった。しかし、習近平政権の発表を鵜呑みにしていいのか>

3月19日、中国国家衛生健康委員会は中国国内の新型肺炎新規感染者の最新データを発表した。それによると、武漢市・湖北省を含めて18日に中国国内で発生した新規感染例はゼロであった。この日に新たに確認された34の新規感染例は全部、中国本土外で感染して入国したケースであるという。

事実であれば、中国国内における新型コロナウイルスの拡散はすでに治まったことになる。問題は国家衛生健康委員会の発表を額面通りに信じて良いかどうかである。

実は、同じ国家衛生健康委員会が今まで日ごとに発表してきた新規感染者の数字を追跡していくと、不審な点があることに気付く。

例えば2月11日から14日までの新規感染者数の推移はまさに謎に満ちている。11日に確認された全国の新規感染者数は2015人であったが、12日にいきなり1万5152人に急増した。前日の約7倍だ。しかし13日になるとまた急減して5090人と前日の3分の1に減った。そして14日には2641人とさらに半減した。

わずか4日間のこのような激しい数字の動きは不自然だ。

2月12日の新規感染者数が11日の7倍になったのは、実は数字の操作とは別の意味での人為的操作の結果である。新型肺炎拡散の中心地である湖北省と武漢の両方で、共産党書記の交代に伴って新型肺炎に対する検査方法が変わり、両地での新規感染者数が急増したのだ。11日、武漢市を含めた湖北省全体の新規感染者数は1638人であったが、12日にはそれが一気に1万4840人に膨らんだ。その結果として当然、全国の新規感染者数は急増した。

問題は2月13日と14日の2日間の新規感染者数の変動である。湖北省の場合、13日の新規感染者数は4823人だが、それは12日の約3分の1だ。12日に新しい検査方法を導入したから新規感染者数が急増したのは理解できるが、13日の数字が12日の3分の1にまで激減した理由は全く分からない。そして14日、この数字はまた前日から半減した。

つまり12日から14日までのわずか3日間、同じ検査方法によりながら、湖北省内の毎日の新規感染者数は6分の1以下になった。このような「理由なき激減」は、果たしてありうるのだろうか。

繰り返された「新規感染者数激減」

実は2月中旬から3月初旬までの間、全国でこのような「理由なき激減」は数回起きた。2月18日、全国で確認された新規感染者数は1749人であったが、19日にそれが4分の1の394人に急減した。2月29日の全国の新規感染者数は573人だったが、3月1日にはそれが202人に半減。2日にはさらに125人になった。

こうしてみると、2月13日以来、国家衛生健康委員会の発表した新規感染者数は10日か1週間ほどの一定の期間をおいて、不自然な激減を繰り返していることが分かる。その結果、2月12日に1万5000人以上あった新規感染者数が3月初めにはすでに100人台に落ち、そして3月18日の国内の新規感染者数は0人となった。

プロフィール

石平

(せき・へい)
評論家。1962年、中国・四川省生まれ。北京大学哲学科卒。88年に留学のため来日後、天安門事件が発生。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。07年末に日本国籍取得。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞受賞。主に中国政治・経済や日本外交について論じている。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

三菱重と米エクソンがCO2回収技術で提携、脱炭素の

ビジネス

日産と仏ルノー、提携関係の再構築発表に向け日程調整

ビジネス

お知らせ=重複記事を削除します

ビジネス

米国株式市場=S&P続落、アップルが安い FRB議

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:台湾半導体 王国に迫るリスク

2022年12月 6日号(11/29発売)

急成長で世界経済を席巻するTSMC。中国から台湾を守る「シリコンの盾」に黄信号が?

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    「犬は飼い主に忠誠心をもつ」は間違い 研究で判明した「犬が本当に考えていること」

  • 2

    「性的すぎる」広告批判は海外でも...高級ブランドが、子供を対象にして大炎上

  • 3

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手

  • 4

    自分を「最優先」しろ...メーガン妃、ヘンリー王子へ…

  • 5

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 6

    英語習得のコツは実はシンプル! 「簡単な本の音読」…

  • 7

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 8

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 9

    名画を攻撃する環境活動家の行動は、「無意味」だが…

  • 10

    メーガン妃の今後を案じ、ヘンリー王子が「絶望」を…

  • 1

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手

  • 2

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は震え、姿勢を保つのに苦労

  • 3

    カメラが捉えたプーチン「屈辱の50秒」...トルコ大統領、2年前の「仕返し」か

  • 4

    「性的すぎる」広告批判は海外でも...高級ブランドが…

  • 5

    飛行機の両隣に肥満の2人! 「悪夢の状況」をツイー…

  • 6

    「犬は飼い主に忠誠心をもつ」は間違い 研究で判明し…

  • 7

    うつ病とは「心のバッテリー」が上がること...「考え…

  • 8

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 9

    「プーチンの犬」メドベージェフ前大統領の転落が止…

  • 10

    父親は「連続殺人鬼」 誰も耳を貸さなかった子供の訴…

  • 1

    セレブたちがハロウィンに見せた本気コスプレ、誰が一番? 「見るに堪えない」「卑猥」と酷評されたのは?

  • 2

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手

  • 3

    血糖値が正常な人は12%だけ。「砂糖よりハチミツが健康」と思っている人が知るべき糖との付き合い方

  • 4

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 5

    カメラが捉えたプーチン「屈辱の50秒」...トルコ大統…

  • 6

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 7

    「セクシー過ぎる?」お騒がせ女優エミリー・ラタコ…

  • 8

    食後70分以内に散歩、筋トレ、階段の上り下り。血糖…

  • 9

    キャサリン妃に「冷え切った目」で見られ、メーガン…

  • 10

    自分を「最優先」しろ...メーガン妃、ヘンリー王子へ…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
CCCメディアハウス求人情報

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中