コラム

中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?

2025年10月11日(土)18時00分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

日清戦争で中国が日本に負けた理由は「食事」

そもそも中国人の伝統の食文化では、料理には「新鮮」「温かさ」「家庭的な味」が重視され、古くから「その場で作り、その場で食べる」習慣が深く根付いている。しかし、中国政府はこの伝統を無視して、23年度の「中央一号文件」で、「洗浄済み野菜や共同調理所をさらに普及させ、預制菜産業を育成・発展させる」と高らかに指示した。中国農業が直面する労働力の高齢化や大規模化対応が目的といわれている。

昔、こんなジョークが流行した。「日清戦争でなぜ中国人は負けたのか? 中国人はその場で作って食べる習慣があって、戦闘中も時間になると武器を捨てて食事を作りに行ったからだ。一方、日本人はおにぎりをかじりながら戦闘を続けた」


おにぎりに慣れても、他人を信用できない社会が続く限り、預制菜は中国人に浸透しないだろう。


ポイント

中央一号文件
中国共産党・中国政府が毎年最初に発表する文書で、2004年以降、連続して農民、農業、農村の「三農問題」をテーマに掲げる。農村問題を重視する党と政府の姿勢を示す。

日清戦争
1894年に日本と清国の間で起きた戦争。朝鮮南部で起きた民衆の反乱に清と日本が出兵。日本軍は翌1895年3月までに遼東半島を制圧し、5月に講和条約が結ばれた。

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プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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