コラム

中国人が「9月は反日、10月は親日」なワケ

2025年10月25日(土)20時13分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<毎年9月に中国は反日モード一色になるが、10月になると親日モードが広がる。なぜか>

旧日本軍の731部隊を題材にした反日映画『731』は公開初日の9月18日(満州事変の記念日だ)、3億4500万元(約73億円)以上の興行収入を記録した。7月に公開され最も話題となった反日映画『南京照相館』も興行収入は30億元(約630億円)を超え、観客動員数は8450万人以上に達した。中国語のSNS上は愛国スローガンや反日動画であふれ、子供も涙を流しながら「日本人を皆殺しにする」とコメントした。


しかし10月になると、全てが逆転した。まず10月1日から始まる国慶節で、大量の中国人観光客が日本にやって来た。延べ23億人以上が移動するこの連休で、最も人気の海外旅行先は日本である。そして諾貝爾奬(ノーベル賞)シーズンが到来すると、生理学・医学賞と化学賞をそれぞれ受賞した2人の日本人科学者が中国ネットで話題を独占した。坂口志文と北川進とは誰なのか? 彼らは何を発見したのか? どうやって何十年もの間、いちずに研究に打ち込めたのか?

愛国者の「小粉紅(シャオフェンホン)」たちも、日本の科学者の研究精神に「心から敬服する」と口をそろえる。官製メディアでさえ、日本の科学者たちの受賞は「実にふさわしい(実至名帰)」と評価している。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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