コラム

低賃金労働者の「怒り」を「感動」へ変換する、中国共産党のプロパガンダ

2025年12月27日(土)08時45分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<中国の若者の就職難が深刻だ。政府はフードデリバリー配達員のような仕事を美化しようとプロパガンダに勤しむが......>

中国で賃金が低く社会的地位も低い仕事といえば、出稼ぎ労働者(農民工)の次にフードデリバリー配達員が挙げられる。より多くの収入を得るため常に時間と競争させられ、周囲から差別的な扱いを受けることも少なくない。

その配達員について、中国官製メディアの代表格である中国中央電視台(CCTV)が先日制作した短編動画が物議を醸した。動画は、「デリバリーの仕事はお金が稼げるだけでなく、いつでも道中の景色を楽しめる」「いつでも役割を切り替えられ、夢に一歩近づいた気がする」と仕事を美化する内容だが、公開されるやネット上で袋だたきに遭った。「なるほど、出前配達は景色を見るため、工事現場でレンガを運ぶのは筋トレのため、道路清掃は日光浴のため、首つりはブランコに乗るためというわけか!」などと皮肉るコメントがあふれた。


今回のように、現実と懸け離れた「正能量(ポジティブエネルギー)」プロパガンダが炎上するのは初めてではない。

例えば2020年の新型コロナウイルス流行期、CCTVは短編動画で妊娠9カ月の看護師が武漢の重症病棟で防護服を着たまま働き続ける姿を称賛し、「英雄的な母」というイメージを打ち出そうとした。しかし、「命を軽視しているだけだ」という強い怒りを全国規模で招く結果になった。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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