コラム

「パナマ運河売却」の香港富豪に激怒......中国経済ポピュリズムの愚かさ

2025年04月03日(木)17時35分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

今回の李の港湾売却がどうなるかはまだ不明だが、中国のポピュリズムの愚かさは一目瞭然だ。政府や官製メディアが意図的にあおる側面もあるが、「李嘉誠をつるせ」というネット上の過激な反応は、政府の想定を超えた富裕層への嫉妬や不満も含む。教育やメディアによる刷り込みだけでなく、経済格差や生活不安がポピュリズムを増幅させている。

この政府にして、この人民あり。そして、この人民にして、この政府あり。中国の不動産市場が最も好調だった10年代に、李はなぜか中国本土の資産を大量に売却した。この国は決して長居する場所ではないと、誰よりも前から悟っていたのだろう。その先見の明と決断力ゆえに、彼は華人として世界一の資産家に成り得たのだ。


ポイント

李嘉誠
日中戦争を逃れて1940年に香港へ。父が結核で死去し、学業を断念して働き始めた。プラスチックの造花事業が当たり、不動産業に転身。89年の天安門事件後、中国投資を増やして成功した。

匯源果汁
1992年創業。国内に50以上の工場を持ち、100%果汁ジュース市場で50%以上のシェアを誇った。買収提案したコカ・コーラは、犯人不明のハッキング被害にも遭ったとされる。

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プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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