コラム

オーストラリアに現れた謎の中国人「ヤン・ランラン」の正体は?

2025年09月04日(木)18時54分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<オーストラリアでロールスロイスを飲酒運転中に事故を起こした23歳の中国人女性ヤン・ランラン。超富裕層に属するその暮らしぶりと、出自や家族を示す情報が一切見つからない謎の正体が世界の中国人の強い関心を呼んだ。いったい誰なのか>

23歳のヤン・ランランはオーストラリア在住の中国出身の女性。シドニーでロールスロイスを飲酒運転中に逆走し、ベンツと正面衝突して相手の運転手に重傷を負わせた。

この事故をきっかけに伝わった若いヤンのあまりの裕福さに世界は驚愕した。彼女が運転していたロールスロイスは150万豪ドル(約1億4000万円)の価値があるが、別にもう1台の白いロールスロイス・ゴーストを所有。自宅はシドニー東部の高級ペントハウスで、外出は常にボディーガード付き。高級ブランドを身にまとい、手持ちのバッグも限定版エルメスだ。


さらに謎に包まれた正体が世界の興味を引いた。SNSアカウントも会社登録情報も不動産登記記録も見当たらない。豪メディアがどんなに調べても、彼女の家族や財産の出どころは「該当者なし」。そもそも「ヤン・ランラン」が本名か分からない。

中国ネットでもさまざまな噂が流れるが、政治的に微妙な臆測が多いため、中国人ネットユーザーはヤン・ランランを「彼女」と置き換える。6年前、最高指導者である習近平(シー・チンピン)の長女・習明澤(シー・ミンツォー)の個人情報をネット上で公開した24人の若者が投獄されたことを誰も忘れていない。

ある中国人はSNS上でこんな詩的な投稿をした。「彼女の名前は風に吹き散らされた秘密のよう/官製メディアの筆先も触れるのを恐れる/わずか6本の記事でさえ朝霧のように消えうせた/音もなく、まるで存在しなかったように」

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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