コラム

習近平が開いた中国「民間企業家座談会」の恐るべき真意

2025年03月05日(水)17時24分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<習近平が先日、北京で開いた「民間企業家座談会」。名前こそ「座談会」と穏やかな印象だが、その実は共産党が企業家たちに服従を求める場だった>

習近平国家主席は先日、北京で中国の民間企業家を集めた座談会を主催した。官製メディアのニュース写真では、共産党指導者だけがカメラに顔を向け、出席した企業家はみな後ろ姿しか写っていなかった。このため、中国ネットは「企業家の後頭部識別コンテスト」で盛り上がった。

誰が会議に招かれたか、招かれなかったのか、企業家たちの座席順位はどうだったのか──。中国政府の公開会議は決まり文句ばかりなので、政府の政策の本当の方向性を理解したいなら、出席者や発言者、座席の順位などをしっかり観察しなければならない。一見無関係に見える細部にこそ、最高権力者の真意が隠されているからだ。


例えば、今回の座談会に金融業者と不動産業者はほぼ見当たらず、前列真ん中の習と対面する座席は製造業とハイテク産業の企業家ばかり。このことから、中国経済の将来は金融や不動産でなく、製造業とハイテク業界に偏るだろうと推測できる。

権力者の本音や気持ちなどを推量する「揣摩聖意(しませいい)」は、1000年前から伝わってきた中国の生きる法則だ。中国の企業家は、いくらカリスマやカネがあっても、後ろ盾となる権力者がいなければ、死ぬよりもひどい生活を送ることになる。かつて中国一の大富豪だったアリババの馬雲(ジャック・マー)がその最たる例だ。マーは金融当局を公に批判してIPO(新規株式公開)を政府に中止させられ、官製メディアから猛批判された。

マーは今回、命じられて座談会に出席したのだろう。かつてカリスマ経営者として輝いた彼は、わざと習が好きな人民服に身を包み、端に座って習の談話を熱心にメモしていた。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

「今後の首脳外交の基礎固めになった」と高市首相、一

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story