コラム

荒ぶる上海の「白衛兵」、厳し過ぎる防疫措置がコロナ以上に市民の命を奪う実態

2022年04月26日(火)18時48分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国「白衛兵」

©2022 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<上品で国際的で、中国人にとっても特別な都市だった上海だが、厳し過ぎるコロナ撲滅運動で市民が死に追いやられる事態となっている>

「何カ所も病院を回ったが、どこからも診察を拒否された。どうにもならない」。4月14日、上海の71歳のバイオリニスト陳順平(チェン・シュンピン)は、急性膵炎の激痛と受診できない絶望の中で、自宅マンションから飛び降りた。

4月20日までに新型コロナに感染し亡くなった上海市民は25人。だが、厳しい防疫措置によって死に追いやられた上海市民は、これ以外にも多くいるはずだ。

「コロナの感染死ではなく防疫死」が上海ロックダウンの現実である。2600万人が家に閉じ込められ、工場と会社は休業、学校、病院は封鎖。スーパーと百貨店もシャッターを下ろし、公共交通機関も停止。高速道路も封鎖され、他所からの救援物資もなかなか市民の手元に届かない。

患者は病院で受診できず、お金があっても野菜を買えない。陽性者が出たら「方舟病院(臨時医療施設)」へ強制連行。2歳の子供も例外ではない......。

人類史上前例がない大規模ロックダウンで上海市民の精神的なダメージも大きかった。自殺が続出し、暴力事件も発生。「いつも上品な上海人が今回のロックダウンで台無しになった」と全ての中国人が嘆いた。

1842年に開港した上海は、英米仏など欧米諸国の租界が造られ、「東洋のパリ」として発展した。上海と言えばファッションと品位の代名詞で、中国人にとって特別な存在であり、「上海は中国の上海ではなく、世界の上海」が上海人の自慢だ。経済特区を持ち、香港を上回る経済都市でもある。

常に国際的な視野を持ち、科学的な合理性を唱える上海は、コロナの感染爆発後も防疫の優等生だった。

だが欧米諸国と同じ「ウィズコロナ」という防疫思想は、「ゼロコロナ」を命じる習近平政権の逆鱗に触れた。だから警察の特殊部隊と人民解放軍を含む3万人以上の防疫部隊(最近はその姿と暴力性から「白衛兵」と呼ばれている)が上海に派遣され、厳しすぎるコロナ撲滅運動を展開している。

上海でいま行われているのは、コロナ撲滅運動というより、経済優先やウィズコロナという欧米思想の撲滅運動と言ったほうが適切だろう。どれだけ国際的な大都市でも、五星紅旗を掲揚する上海はやはり社会主義の上海なのだ。

ポイント

■まんが内の標語など
ゼロコロナには道理がある/ロックダウン無罪/防疫の遂行を徹底せよ/白衛兵/習近平選集

■白衛兵
防疫活動のため上海に派遣された白い防護服姿の警察官や兵士。文化大革命中の紅衛兵にちなむ。有無を言わさず暴力的に強制隔離を実行する映像が次々とSNSに投稿された。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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