コラム

次々と明らかになり始めたバイデン次期政権は「進撃の陣容」

2020年12月09日(水)17時00分

外交・安全保障担当の人事を発表するバイデン(11月24日)JOSHUA ROBERTSーREUTERS

<ケネディやオバマのような知力はないが半世紀におよぶ政界での経験と教訓を生かそうとする顔触れに>

2016年の共和党大統領予備選に出馬し、将来の大統領に意欲を見せるマルコ・ルビオ上院議員は、二極化した今のアメリカを象徴するようなコメントを出した。

「バイデン(次期大統領)が選んだ閣僚候補たちは、アイビーリーグの名門大学出身で華やかな経歴の持ち主だ。全ての適切な会議に出席して、アメリカの衰退を丁寧かつ秩序正しく見守るだろう」

既に2024年大統領選レースの位置取りに必死のルビオとしては、トランプ大統領の流儀を完璧に取り入れなければならないようだ。だが、11月24日にバイデンが発表した外交・安全保障担当の閣僚や主要ポストの人選は経歴・資質共に申し分ない。

まだ正式発表されていない経済・金融チームの有力候補たちも同様だ。バイデンは上院議員・副大統領として過去のどの大統領にも負けない豊富な外交経験を持っているが、政権の陣容も経験豊かな顔触れになりそうだ。ここで主な特徴をまとめてみると、主なポイントは7つある。

1. トランプ流の否定 本人が典型的なワシントンの既成政治家ということだけでなく、主要閣僚の人選で経験を重視する点でもそうだ。トランプは国務長官に石油会社のCEO(レックス・ティラーソン)を、財務長官に政府で働いたことがない元銀行マン(スティーブン・ムニューシン)を選んだ。一方、バイデンは国務長官には元国務副長官(アントニー・ブリンケン)を、財務長官にはFRBの前議長(ジャネット・イエレン)を起用する見込みだ。

2. 初物尽くし 国土安全保障長官に初の中南米系(アレハンドロ・マヨルカス)を抜擢。国家情報長官にも初の女性(アブリル・ヘインズ)を選んだ。国防長官の有力候補2人も女性で、起用が実現すればこれまた史上初になる。さらにバイデンは、気候変動問題担当特使のポストを新設した(ジョン・ケリー)。

3. 専門知識 バイデンは今回の人事発表の際、「私が知りたいことではなく、知る必要があることを教えてほしい」と言った。政府で働いた経験が長いベテランの重鎮を選んだことは、国内外の情勢が混乱の度を深めるなか、国民に安心感を与えようとする意図を強く感じさせる。

4. 自信と余裕 自身は平凡な大学に入り、そこでもいい成績を残せなかったバイデンだが、史上最高クラスの秀才を何人も部下に起用した。国家安全保障担当の大統領補佐官(ジェイク・サリバン)はエール大学を最高の成績で卒業し、アメリカ最高の奨学金を獲得してオックスフォード大学に留学した後、アメリカ最高ランクの法科大学院を卒業した。国務長官はハーバード大学とコロンビア大学法科大学院を卒業。財務長官候補は労働経済学の権威だ。さらに04年の民主党大統領候補で、オバマ政権の国務長官を務めたケリーを気候変動問題担当特使に起用した。バイデンは大物の部下を持つことを恐れていない。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

過度な為替変動には断固たる措置、介入はフリーハンド

ビジネス

ミランFRB理事「利下げなければ景気後退リスク」、

ワールド

ネクスペリアと親会社が初協議、対話継続で合意 中国

ワールド

ウクライナ巡る米ロ協議、「画期的ではない」=ロシア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story