コラム

全米が注目するバイデンの副大統領候補選びは未来の「女性大統領」選びに?

2020年08月01日(土)19時00分

バイデンは「安全策」のライス(写真)かウォーレンを選ぶ? BRENDAN MCDERMIDー REUTERS

<「楽な仕事」の副大統領職が今年の大統領選挙で重要性を帯びている理由>

私はずっとアメリカ副大統領に強い関心を抱いてきた。

今でも覚えているのは、5歳の頃、父が運転する車でドライブをしていて、ワシントンの米海軍天文台の敷地内にある副大統領公邸の前を通り掛かったときのことだ。あれが副大統領の家だよと言われて、とても興奮した。副大統領公邸が私たちの家と同じ通り沿いにあると分かったからだ。

こうした経験ゆえ、私は副大統領という制度に対する批判を受け入れ難く感じてきた。この役職の存在意義を疑問視する主張は後を絶たない。

「世界で一番いい職は副大統領だ。仕事はたった1つ。朝起きて、『大統領は元気かね?』と尋ねることだけだ」と、往年のコメディアンでユーモア作家のウィル・ロジャーズは述べた。いま存命の副大統領経験者で最も有名なのは、ジョー・バイデン前副大統領だろう。そのバイデンもこう語ったことがある。「副大統領は楽な仕事だ。何もしなくていい」

憲法が規定する副大統領の職務は、上院を統括し、採決が半数に割れたら1票を投じること。つまり政策や外交で主要な役回りは期待されていない。

実際、アメリカの歴史では40年近く副大統領不在の期間があった。1967年の憲法修正以前は、副大統領の欠員を埋めるための規定がなく、副大統領が死亡したり、辞任したり、大統領に昇格した場合は空席のままだったのだ。1840~1980年の間、現職の副大統領が大統領選に挑戦して当選したケースは一度もなかった。

しかし、副大統領がのちに大統領になる可能性は十分にある。これまで14人の副大統領経験者が大統領に就任した(このうち、大統領の死亡による昇格が8人、辞任による昇格が1人)。

今年の大統領選は、副大統領の重要性を際立たせている。民主党候補のバイデンは78歳。当選すれば、就任時で史上最高齢の大統領になる。当選しても再選を目指さず、1期限りで退任するという観測も広がっている。

つまり、近くバイデンが選ぶ副大統領候補は、次の大統領の有力候補になる。彼は女性を選ぶと約束しているので、今回の副大統領候補選びは、未来の「史上初の女性大統領」の指名という意味を持ち得る。

消息筋によると、現時点での有力候補は4人。カマラ・ハリス上院議員、スーザン・ライス元国連大使、エリザベス・ウォーレン上院議員、カレン・バス下院議員である。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、和平合意後も軍隊と安全保障の「保証」必

ビジネス

欧州外為市場=ドル週間で4カ月ぶり大幅安へ、米利下

ビジネス

ECB、利下げ急がず 緩和終了との主張も=10月理

ワールド

米ウ協議の和平案、合意の基礎も ウ軍撤退なければ戦
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story