コラム

ついに復活、大本命バイデンの「内なる敵」は若者たち?

2020年03月12日(木)17時30分

1) 党内の亀裂 

民主党内が真っ二つに割れている現状がトランプを利するのは明らかだ。バイデン支持派は黒人層と30歳以上の有権者。一方のサンダースは若者の心をしっかりつかんでいる。

4年前と同様、サンダースが候補指名を勝ち取る可能性は限りなく低いし、人種や世代で引き裂かれた党が本選挙で一つにまとまる可能性も低い。全国的な人口動態で見れば、民主党の未来は明るいはずだ。

しかしこの亀裂を修復できなければ民主党は事実上分裂しかねない。4年前にヒラリー・クリントンがトランプに負けたのも、サンダース支持層の相当部分が彼女以外の候補に票を投じ、あるいは棄権したからだ。

4年前同様にサンダースが最後まで争って敗れた場合、彼の熱烈な支持層の悲しみや怒りは前回以上だろう。ネバダ州で大勝した晩のサンダース支持者の熱狂ぶりを見ればいい。まるで王様の戴冠式だった。あのころ予想屋の見立てはサンダースの勝率50%だったが、今はバイデン80%、サンダース17%だ。

他候補が予想外に早く撤退したことで、既にサンダース支持者の間には「党幹部の陰謀」説が浮上している。このままだと党幹部への不信感は4年前より強くなり、同時に行われる上下両院選でも民主党陣営は苦しい戦いを強いられるだろう。

それだけではない。若い民主党員が党幹部に愛想を尽かせば、今後の選挙でも共和党への追い風となり、あの時代遅れの党を延命させることになる。いま民主党に必要なのは団結と、とにかく投票率を上げる努力。内輪もめをしている場合ではない。

2) 若者の離反 

最悪の事態だが、民主党の大統領候補が予備選の結果ではなく、党幹部らの話し合いで決まる可能性もある。スーパーチューズデーでバイデンが奇跡の復活を遂げたのは事実だが、選挙予想で定評のある統計学者のネート・シルバーによれば、バイデンが今後の戦いで一般代議員の過半数を獲得し、7月にウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれる民主党全国大会で晴れて正式な候補に指名される確率は30%しかない。

ちなみにサンダースが指名される確率は8%(他の候補者は1%に満たない)。一番可能性が高いのは「誰も過半数を獲得できない」場合で、確率は60%とされる。

その場合はどうなるか。サンダース支持の若者たちが怒りを爆発させるだろう。サンダースが指名される可能性はゼロに近いからだ。

党大会までに誰も代議員の過半数を獲得できなかった場合は、現職の議員や州知事、大統領経験者、党幹部などで構成される特別代議員の出番となる。そして特別代議員の大半は、サンダースではトランプに勝てないと信じている。

特別代議員は、その名のとおり特別かつ特権的な存在であり、サンダース陣営の若者たちの対極に位置する。一昨年の民主党大会で候補指名のルールが変わり、特別代議員は1回目の投票に参加しないことになったが、もつれた場合は彼らの票が結果を左右することになる。

当然、純粋で行動力のある若者たちは(またしても)裏切られたと感じるだろう。それこそトランプ陣営の思うツボだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story