コラム

「最も健全な民主主義国」日本は米の「4倍増」要求を自立の好機にせよ

2019年11月25日(月)17時05分

トランプは問題の原因ではなく症状の1つにすぎない YURI GRIPAS-REUTERS

<米軍駐留経費負担の増額要求は、無理難題に見えるが、日本にとってチャンスでもある。地政学的に賢明でない要求だが、トランプはアメリカの変調の原因ではなく症状の1つだからだ>

米リスクコンサルティング会社ユーラシア・グループを率いる国際政治学者イアン・ブレマーが11月18日、パレスホテル東京で「Gゼロサミット2019」を開催した。そのタイミングは地政学的に見て、これ以上ないほど象徴的だ。

【参考記事】トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書

この会議の直前に、米国家安全保障担当の高官2人が7月、日本と韓国に米軍の駐留経費負担を従来の4倍と5倍にそれぞれ増やすよう要求したというニュースが飛び込んできたからだ。世界はリーダーなき「Gゼロ」時代に突入したと主張するブレマーは日本に対し、リベラルな民主主義陣営のモデルになるべきだと説く。

戦略的に見れば、トランプ米大統領のやり方は支離滅裂だ。中国に対抗する超大国アメリカの最高責任者を任じるのであれば、なぜアジアの同盟国との緊張を高め、中国を利するようなまねをするのか。重要な同盟国である日韓との結び付きを強化して、台頭する中国との間でバランスを取るのが地政学的に賢明な策ではないのか。

この点については、トランプの気まぐれな気質のせいだと説明することも可能だ。一貫したビジョンや戦略が見えないトランプ政権の混乱した対応は、外交面で特に目立つ。だが、この説明は表層的過ぎる。

「最も健全な民主主義国家」

今回の要求の背後には、世界のリーダーの地位から徐々に退こうとするアメリカの長期的な動きがある。トランプはアメリカのリーダーシップ喪失の原因ではなく、症状の1つにすぎない。要するに、アメリカは世界のリーダーをもう辞めたいのだ。

アメリカの大統領選挙には、「ポスト・ベトナム症候群」と呼ばれる現象がはっきりと見て取れる。ベトナム戦争以前には、内政・外交の両面で経験豊富な候補者が90%の確率で勝利を収めていた。だが、それ以降は逆に経験の少ない候補者が90%の確率で勝っている。

民主・共和両党は1976年のカーターから2000年のブッシュ、2008年のオバマまで、外交経験のない人物を大統領候補に選ぶ傾向がある。今回の民主党予備選でも、ほぼ無名だった37歳の市長ピート・ブーティジェッジが最初の予備選と党員集会が行われる2州の世論調査でトップに立った。

どの候補者も出馬当時は外交経験に乏しいだけでなく、「撤退の外交」を主張していたように見えた。アメリカでは、ほかの国はもっと大きな役割を引き受けるべきだという主張が一貫して繰り返されてきた。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB理事ら、インフレ警戒 利上げは慎重に見極め

ワールド

台湾輸出受注、2月23.8%増 予想下回る

ビジネス

ユニリーバの食品事業、米マコーミックが買収提案

ビジネス

アマゾンが再びスマホ開発、「Transformer
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story