最新記事

在日米軍

トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書

2019年11月16日(土)19時15分
ララ・セリグマン、ロビー・グレイマー(共にフォーリン・ポリシー誌記者)

トランプ政権は日本政府に対して「思いやり予算」を現在の4倍以上に増やすように要求 Jonathan Ernst-REUTERS

<21年3月末の日米特別協定更新の期限を前に、日本が負担している約20億ドルを約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた>

トランプ米大統領が日本政府に対し、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を大幅に増やすよう要求していることが分かった。

事情を知る米政府関係者および元米政府関係者がフォーリン・ポリシー誌に語った話によれば、トランプ政権は日本政府に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求めているという。7月に日本を訪問したジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官とマット・ポティンジャーNSCアジア上級部長(いずれも当時)が要求を伝えたとのことだ。

米政府が米軍駐留経費の負担増を要求しているアジアの同盟国は、日本だけではない。ボルトンとポティンジャーは韓国にも、経費負担を現在の約5倍に増やすよう求めたと、同じ消息筋は語っている。日本には約5万4000人、韓国には約2万8500人の米兵が駐留している。

「このように法外な要求を一方的に突き付けるやり方は、反米感情に火を付けかねない」と、元CIA分析官でもあるヘリテージ財団のブルース・クリングナー北東アジア担当上級研究員は懸念する。「同盟が揺らぎ、米軍のプレゼンスが縮小して抑止力が弱まるようなことがあれば、恩恵に浴するのは北朝鮮や中国、ロシアだ」

基地整備や兵器購入も

トランプ政権の日韓両国政府への要求は、世界規模で同盟国に国防支出を増やさせようとする動きの一環と位置付けられる。

トランプは以前から、ヨーロッパの同盟国の国防予算が少な過ぎると批判していた。そうした圧力は効果を発揮したらしい。NATO諸国は来年末までに、国防予算を2016年の水準に比べて1000億ドル以上積み増すことにした。

トランプがNATOの次に目を向けたのがアジアの同盟国だったようだ。アジアでは、中国が軍事力を増強している上に、北朝鮮の軍事的脅威も再び高まっている。日本は、アメリカとの特別協定の下、米軍駐留経費として約20億ドルを拠出している。現在の特別協定は、21年3月末に更新期限を迎える。3人の元米国防総省当局者によれば、米政府は協定更新に向けた交渉が本格化するのを前に、この予算を約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた。

韓国も年内に同様の協定の更新期限を迎える。ある元米国防総省当局者によれば、米政府は韓国政府に対し、駐留経費負担を約50億ドルに引き上げるよう要求している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、国民に「直接資金還元」する医療保険制度

ビジネス

MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに最大

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

中国過剰生産、解決策なければEU市場を保護=独財務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中