コラム

福祉受給者は締め出し? トランプ新移民規制の衝撃

2019年08月24日(土)15時40分

問題は、経済への影響だけではない。人種問題をめぐる議論にも再び火が付き始めている。市民権・移民局のケン・クチネリ局長代行は、ニューヨークの自由の女神像の台座に刻まれた詩の「貧しき者をわれに与えよ」という言葉について、階級社会で貧しい生活を送る「ヨーロッパ出身者」を指しているという解釈を披露した。

トランプ政権が今回の新規制を打ち出したのは、来年の大統領選での再選に向けて中西部の白人有権者に訴え掛ける作戦の一環に見える。この層の間では、非白人の人口が増えることへの不安が根強いからだ。

民主党の大統領候補指名を目指すベト・オローク前下院議員がツイッターに書き込んだように、トランプ政権は「自由の女神は白人だけのものだと思っている」のかもしれない。

このまま10月に新規制が実施されるかは分からない。それは、差し止め裁判の行方にも影響される。新規制が違法と判断されたり、実施までに長い時間がかかったりする可能性もある。

それでも、大統領選の選挙戦とアメリカの寛容の精神への影響は既に生じつつある。

<本誌2019年8月27日号掲載>

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※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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