コラム

知られざる数億ションの世界(4)テレビに出るお金持ちの家に「生活感がない」と思ったら......

2022年09月06日(火)10時53分

生活感のない住まい vicnt-iStock.

<オーナーはそこに住まず、転売益のため飾り立てているような物件がこの世にはある>

新築時の分譲価格が数億円、ときに10億円を超える高額住戸=数億ション、10億ションは、一般の住まいとは大きく異なる部分が多い。

その暮らしは、どのようなものなのか。興味を抱く人は多いだろう。自分で購入することはできないが、家の中の様子くらいは見てみたい、と思うわけだ。その思いに応えるため、ときどきテレビ番組で家の中が紹介されることがある。

有名人の室内が公開されることもあるが、あるオーナー社長の住まいなどと紹介される一般人宅のケースもある。

有名人の住まいには趣味の品物が飾られていることが多いのだが、一般人宅の状況は少々異なることが多い。

リビングが50畳、寝室は20畳、キッチンが10畳......とてつもなく広く、豪華な設備の数々が紹介されるが、その美しさとともに驚くのが、片付きのよさ。余計なものが一切なく、映画のセットのようにきれいに片付いている室内が映し出されることがあるのだ。

「さすがにお金持ちの家というものは、整理整頓が行き届いているものだ」と感心したりするのだが、違和感がないといったら、ウソになる。

テレビ取材を受けるのだから、掃除はするはず。が、あまりにも整いすぎている。そこまできれいにするためには、清掃スタッフの力を借りているのではないか。はたまた、潔癖症といえるほど家をきれいにすることで、金運が高まるものなのか......いろいろなことを考えてしまいがちだ。

もちろん、精一杯掃除をする人や、潔癖症の人もいるはず。が、ファミリーで生活をしていれば、それなりに積み重なるものや、冷蔵庫の扉に貼り付けられるものが出てくるもの。映画のセットのように、無機質な状態を保ち続けることはできない。

では、なぜ映画のセットのような、もしくは販売センターのモデルルームのような室内が実現するのか。

じつは、そこに、数億ションを購入し続ける人たちの密かな楽しみが垣間みえるのだった。

■「知られざる数億ションの世界」第1回「丸見えで恥ずかしい浴室が当たり前な理由」を読む
■「知られざる数億ションの世界」第2回「照明がつかない住戸には大型金庫がある」を読む
■「知られざる数億ションの世界」第3回「超高額住戸って、どれだけ広いものなの?」

確実に存在する「転売目的の購入者」

数億ションには、「転売目的の購入者」が存在する。「このマンションは値上がりする」と予測した物件を購入し、未入居のまま数年後に買ったときよりも高い値段で転売するものだ。

マンションの場合、新築購入してから、建物が完成するまで短くて1年、長いもので3年かかる。それだけ時間があくと建物完成時に「買ったときよりも高くなった」という事態が起きやすい。

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国中古住宅価格、4月は前月比0.7%下落 売り出

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story