コラム

知られざる数億ションの世界(5)地方都市のタワマン最上級住戸は誰が、なぜ買う?

2022年09月27日(火)12時00分

郊外や地方都市の超高層マンション最上階から臨む眺望は格別 埼玉県内で筆者撮影

<郊外や地方都市で次々と超高層マンションが生まれる人間心理と販売戦略>

新築時の分譲価格が数億円、ときに10億円を超える高額住戸=数億ションや10億ションには、一般の住まいとは大きく異なる部分が多い。

今回は、郊外や地方都市で増えている超高層マンションにおける最上階・高額住戸の話だ。

「知られざる数億ションの世界」(1)〜(4)を読む

超高層マンションは、本来は都心部に似合う住居形態といえる。ビルが建て込む東京や大阪の都心部は、まさに超高層マンションの適正地だろう。

それでも、近年は郊外エリアや地方都市でも超高層マンションの数が増えるようになった。理由は、駅周辺の再開発で超高層マンションが誕生しやすいからだ。

再開発では、それまでの建物をすべて取り壊し、新たな街がゼロからつくられる。その際、歩道付きで幅広の道路が新たにつくられ、公園や緑地帯も確保される。幅広道路や公園のスペースをつくり出すため、建物は高層化せざるを得ない。

「土地の高度利用」を図るため、建設されるマンションは超高層になりがちなのである。

郊外や地方都市の駅周辺再開発エリアに誕生する超高層マンションは、周囲に高層建築物が少ないため、「ひときわ眺望がよい」という長所が生まれやすい。

その長所を十二分に満喫できるのが、最上階住戸。だから、郊外や地方都市において、超高層マンションの最上階は特別感が強まる。最上階のなかでもコーナーに位置し、専有面積が最も大きい住戸となると、特別のなかでも特別な存在。つまり、「ナンバーワン住戸」となり、価格も最上級となる。

下層部の75平米・3LDKが5000万円程度のとき、最上階角住戸で150平米の住戸は2億円というような高額になりやすい。

広さで比べれば、150平米は75平米の2倍。なので、5000万円の2倍で1億円となってもよさそうだ。

しかし、プレミアム要素となる「最上階」や「角住戸」に加え、「最上階だけは天井が高い」ことや「設備仕様のレベルがケタ外れに高い」ことなどで、5000万円の4倍・2億円というような価格設定になってしまうわけだ。

で、その売れ行きはどうかというと......ちょっと信じられないことが起きるのである。

最上階・最高額住戸から売れてゆく

下層部の75平米3LDKが5000万円程度のとき、最上階角住戸で150平米の住戸は2億円......それだけ価格差を付けたら、いくらなんでも高すぎる。販売に苦労するのでは、と思いたくなる。

ところが、実際には高額の最上階住戸から売れてゆく。それどころか、抽選による販売となるケースが多い。

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国中古住宅価格、4月は前月比0.7%下落 売り出

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story