コラム

「南向き信仰」に代わる「北向き愛」。強烈な日差しで超高層マンションに発生する灼熱地獄

2022年07月19日(火)18時15分

超高層マンションは、建物周囲にオープンスペースを設け、ゆったりと建設される。建物の密集を防ぐため、上に伸ばそうという発想でつくられるのでまわりが空くわけだ。

その結果、前を遮る建物がない、もしくは少ないため、住戸内に太陽光線が入りやすい。これも、夏に室内温度が大きく上がる原因になる。

UV カットガラスで熱が下がる、という勘違いも

太陽光が差し込んでも、窓に最新のガラスを使っていれば、室内温度は上がらない、と考える人もいるだろう。

たしかに、太陽光の熱を反射させるガラスもあるのだが、それを採用するケースはまだ少ない。

多くのマンションのサッシに採用されるペアガラスやUVカットガラスでは、太陽光線の熱を遮断することはできない。

それができるのは、LowーE(ローイー)ガラスやエコガラスと呼ばれているもの。遮熱効果がある金属膜をコーティングしたガラスである。一般的なペアガラスやUVカットガラスは紫外線を防いでも、赤外線は防げない。つまり、太陽光の熱を通してしまう。

夏の気温上昇が問題となっている現在、日当たりのよい超高層マンションでは、LowーEガラスやエコガラスの採用を増やすなど、窓の遮熱対策にもっと力を入れるべきだろう。

もしくは、遮熱効果のあるガラスを2重に設置するのも有効なのだが、それらの工夫を採用すると、建設費がはね上がる。二重に窓ガラスを設置して夏の暑さを軽減させる場合、窓と窓の間隔を大きくとる必要があるため、室内の有効面積が狭くなる、といった弊害も生じる。

それでも、夏の暑さが今後さらに厳しくなれば、思い切った対策も必要だろう。昨今の猛烈な暑さを体験すると、そんな気持ちになってしまうのである。

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

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