コラム

ニューヨークの地下鉄にホームドア導入は可能か?

2023年10月25日(水)12時00分

コストと並んで問題になっているのは、そもそもホームドアの設置可能な駅が少ないという問題です。ニューヨークの地下鉄には全部で468の駅があるのですが、設置可能な駅は178駅程度という調査結果が出ています。恐らく、豪華なフルスクリーン式だと、急カーブ上の駅や天井の低い駅には設置できないと思いますが、設置率が3分の1では困ります。

 
 
 
 

日本の場合は、ハーフハイト式の可動柵が主流で、中には急カーブ上に設置できるものもあります。そもそもハーフハイト式なら、天井の高さも問題ありません。気になるのは、金属製の重たい可動柵を設置すると、荷重が全てホームに乗ることですが、古くて脆弱なホームには鋼管を入れるなどして簡単に補強する技術も日本にはあります。

ニューヨークでは、ホームドアはあくまでフルスクリーン式が理想で、ハーフハイト式は「簡易式」という認識があるようで、有識者の発言などにもそうした「偏見」が見られます。ですが、日本の場合で考えれば、ハーフハイト式でも転落事故はほぼゼロに抑えることができています。

もしかしたら、これはチャンスかもしれません。日本のホームドア製造企業は、コスパ抜群で効果満点の日本式をニューヨークの地下鉄に思い切り売り込みをしてはどうかと思います。仮に成約した場合は、現地での雇用がどうのと言う雑音はかわして、堂々と日本で製造して輸出し、日本のGDPにフルにカウントすればいいと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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