コラム

再選へ向けてバイデン出馬、その多難な前途

2023年04月26日(水)14時00分

3番目は民主党内の動向です。以前から、高齢のバイデンに対して共和党が若いデサンティスでまとまるようだと、苦しい選挙戦になることは民主党内でも指摘されていました。そんな中で、民主党支持者の中から待望論があるのは、ガビン・ニューサム、カリフォルニア州知事です。けれども、そのニューサムは「バイデン氏が出馬するなら自分は出ない」としており、慎重な構えです。

そんな中で、JFKの弟で非業の死を遂げたロバート・ケネディ(RFK)元司法長官の長男である、RFKジュニアが民主党の大統領予備選に名乗りを上げています。同氏は、実は「ワクチン陰謀論」を熱心に説いていることが有名で、最初から「独自の戦い」のような雰囲気もあるのですが、とにかく同氏の出馬により曲がりなりにも予備選レースが成立しそうになってきました。

仮に今後、バイデンに健康問題が取り沙汰されたり、支持率の大幅な低下が起きた場合には、多くの候補が名乗りを上げることで予備選レースが活性化することは十分にあると思います。

その場合、バイデン大統領、あるいはバイデン政権としては「当初のプラン通り」ハリス副大統領を後継候補として想定しているようです。何よりも、今回の出馬宣言ビデオでは、3分の動画の中で、ざっと数えただけで17回もハリスを登場させています。途中からはサブリミナル映像のようにハリスの姿が何度も出てくるようになり、ハリスの夫君のダグ・エンホフ氏の姿も2回出てきます。そして最後は「バイデン=ハリス」というロゴ(新デザイン)で締めくくられるのです。

しかしながら、現時点ではハリス副大統領の支持率は極めて低く、民主党内には「2024年には副大統領候補を入れ替えて戦うべき」という声があるのは事実です。後になって否定はしましたが、エリザベス・ウォーレン上院議員がそのように発言して騒動になったこともありました。この「サブリミナル動画」は、こうした動きを封じる狙いがあると考えられますが、もしかすると党内の反感を買うかもしれません。

このように、出馬表明したバイデン大統領の前途は多難と言えそうです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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