最新記事
世界経済

ポスト・ドルの時代へ...アジアと欧州が築く「もう一つの世界秩序」

SAVING WORLD ECONOMY SANS US

2025年7月2日(水)16時03分
魏尚進(ウエイ・シャンチン、コロンビア大学経営大学院教授、元アジア開発銀行チーフエコノミスト)
ポスト・ドルの時代へ...アジアと欧州が築く「もう一つの世界秩序」

欧州とアジアの経済圏連携を強化すべきだ(写真は独ハンブルク港) SEAN GALLUP/GETTY IMAGES

<トランプの気まぐれな政治、膨らむ債務、そして通貨への信頼の揺らぎ。アメリカがもはや国際秩序の「守り手」でなくなった今、アジアと欧州に求められるのは「自ら秩序をつくる」決意だ>

さあ大変、今は世界中の国が同時多発的なショックに見舞われている。アメリカの気まぐれな関税政策で世界の貿易システムには激震が走っているし、中東での軍事衝突が重要な貿易ルートと原油の生産に支障を来すリスクを高めてもいる。

それだけではない。ドナルド・トランプ米大統領が推す自称「ビッグでビューティフル」な予算案は大幅減税と社会支出の削減を抱き合わせて高所得者を優遇するもので、既に脆弱なアメリカの財政基盤を悪化させるのは必至だ。そのためドル建て資産の安全性に対する懸念も高まっている。


こうしたショックからは誰も逃れられない。だからアジアも欧州も、まずはそうしたリスクを軽減するための協力を優先すべきだ。どちらもドル建ての取引や資産への依存度が高い。アジア諸国の多くでは外貨準備の大半が米ドルであり、貿易決済のほとんどがドル建てだ。

言い換えれば、世界を揺さぶる最近の混乱は、アジアと欧州が構築してきた経済モデルの基盤である自由貿易そのものを脅かしている。かつて国際秩序の「ルール決定者」だったアメリカは、今や「ルール破壊者」になりつつある。アメリカの財政悪化とトランプの恣意的な政策が相まって、ドルの信頼性は損なわれている。

食と健康
「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社食サービス、利用拡大を支えるのは「シニア世代の活躍」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=S&P・ナスダック1%超安

ワールド

金総書記が北京到着、娘も同行のもよう プーチン氏と

ビジネス

住友商や三井住友系など4社、米航空機リースを1兆円

ビジネス

サントリー会長辞任の新浪氏、3日に予定通り経済同友
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 5
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 6
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 7
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 8
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中