コラム

投票日迫る中間選挙、上院の勝敗を握るペンシルベニア州の情勢

2022年10月26日(水)17時15分

共和党候補のオズはトランプの支援を受けている Andrew Kelly-REUTERS

<注目選挙区のペンシルベニア州は、イスラム系テレビタレントの共和党候補とユニークな風貌の民主党候補の異色対決>

アメリカの中間選挙の投票日である、11月8日が迫って来ました。現時点では、各種の世論調査を総合しますと、下院は与野党逆転となって共和党が過半数を獲得するという予想が多くなっています。

各州の知事選では、テキサスのアボット知事(共和)、フロリダのデサントス知事(共和)、カリフォルニアのニューサム知事(民主)などは優勢で、特にデサントス知事とニューサム知事は勝利して、2024年の大統領選への勢いを付けようという構えです。一方で、盤石と思われたニューヨークのホークル知事(民主)は治安悪化への責任を追及されて支持が急降下しているのも注目されています。

そんな中で、やはり今回の選挙の最大の注目点は「上院」です。

現在は定数100に対して、民主党と共和党が50議席対50議席で拮抗しており、賛否同数の場合は上院議長をかねるハリス副大統領(民主)が最後の一票を行使できることで、辛うじて民主党が過半数を維持しています。この勢力構図がどうなるかですが、もしも共和党が多数を握ると重要法案の賛否だけでなく、閣僚や最高裁判事の人事などでも民主党案を潰すことができ、バイデン政権は「死に体」になってしまいます。

大統領選も左右するスイングステイト

では選挙の情勢はどうかというと、非常に接戦となっているオハイオとペンシルベニアを除くと、民主党と共和党は49議席対49議席(非改選を含む)となっているというのが、多くの世論調査結果から推測されています。また、接戦とはいえオハイオ州は、ここへ来て共和党が優勢のようです。となると、最終的な結果はペンシルベニア州に持ち込まれると考えられます。

お断りしておきますが、当確の出る順番としては、もしかすると選挙制度をめぐって両派が投票前から激しく競っているジョージア州の方が遅れるかもしれません。ですが、接戦となっていてその結果が上院をどちらがコントロールするかを左右するということで、今回はペンシルベニア州に注目したいと思います。

同州は最近の選挙では民主党と共和党を「スイング」することで有名であり、また大統領選挙の選挙人数も大きい(2024年で19人、前回よりマイナス1)ため、しばしば大統領選の結果を左右してきました。今回は上院の大勢を左右する事になりそうです。

まず全体の構図ですが、トランプの推す医師でテレビタレント(医事評論家)のメメット・オズ候補(共和)に対して、元ブラドック町長で現副知事のジョン・フェッターマン候補(民主)が対決するという構図になっています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story