コラム

日本の外国人入国停止と、コロナ対応の「次の手」

2021年12月01日(水)16時00分

オミクロン株への対応で各国の空港は厳戒態勢になっている(写真は車椅子が必要な乗客の到着準備をする成田空港職員) Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<オミクロン株の実態を見極めるまでの判断としては合理的だが、今後国民へのブースター接種をどう進め、通常の状態に戻していくかが問題>

南アフリカ共和国における、今回のオミクロン変異株の検知という動きに対して、日本政府は外国人の入国停止を即断しました。併せて、日本人帰国者などの新規入国にも規制が強化されています。我々、在外邦人にとってはさらに日本が遠くなることから複雑な思いがありますが、オミクロン株について「感染力が強く強毒性」だという可能性が排除できない中では、政府の判断には短期的な合理性はあると思います。

この問題については日替わりで事態が変化することも予想されるので、このぐらいにしておきますが、現時点でアメリカから日本の新型コロナウイルスの感染状況を見ていますと、ほとんど「感染ゼロ」という羨ましい状態と思えます。再拡大が見られるアメリカ北東部からは、日本が本当に「まぶしく」見えます。

その一方で外から見ている者として、日本のコロナ政策については、2つのことが気になります。

1つは、どうして「感染ゼロ」になったのかという点です。全くの私見ですが、デルタ株による感染が再拡大しているアメリカ東北部と比較すると、大きな違いがあり、そこに「ゼロ」の秘密があるように見えます。

現状が「真逆」の日米

まずアメリカ東北部の状況ですが、たとえばニュージャージー州の場合を例にとると、
・ワクチン接種率(必要な接種数を完了)が69.7%と、70%に達していない
・必要な接種を完了していても、そこから6カ月以上を経過している人が多い
・ブースター(3回目)接種が進んでいない
・その一方で、コロナ禍前の行動パターンに戻っている人が圧倒的
といった現状があります。

その結果として、「活動的な人」「接種していない人」「接種から時間が経過して抗体の力が落ちている人」といったカテゴリの人を中心に感染が拡大しています。人口が900万という州で、今日(11月30日)の報告数は新規陽性者2352人、死者42人と非常に厳しい状況です。

ということは日本はこの状態の「真逆」であると考えられます。

・活動的な人を含めたワクチン接種率が高く
・しかも接種から期間が経っていないので抗体の力が高く
・それにもかかわらず、コロナ禍の行動様式が厳格に守られている

この3つの要因が重なって「感染ほぼゼロ」が達成できていると考えられます。この点については、今後のためにも数理関係の研究者などを中心に、しっかりした検証が必要だと思います。

2つ目は、この「次の手」をどうするかという問題です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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