コラム

感染爆発の渦中にあるアメリカが、集団免疫戦略に転じる可能性はあるか?

2020年07月16日(木)16時10分

仮にトランプ政権が、集団免疫戦略に転じるとすれば、選挙前に「成果(が可能だとして)」を出さねばなりません。その場合、南部、中西部などを対象として「相当に犠牲が出てもいいから経済をフル稼働しつつ、集団免疫を狙う」戦略を、仮に今から強行しても間に合わないと思います。

つまり、投票行動に大きな影響を与える9月から10月のテレビ討論の時点では、全国的に膨大な死者の数字と、悲惨なまでの医療崩壊のニュースが溢れかえる可能性が大きいのです。しかも仮に奇跡が起きて経済の「V字回復」が可能になるとしても、選挙前には間に合いません。

その選挙ということでは、現在ちょうど感染爆発が加速しつつあるテキサス、フロリダといった州は、共和党と民主党の主戦場となっています。テキサス州のアボット知事も、フロリダ州のデサンティス知事も共和党ですが、厳しい状況の中で、再度のロックダウンをするのかしないのか、9月に学校を開けるのか開けないのか難しい判断を迫られています。

つまり、感染抑制を強く望む世論と、経済活動の維持を望む世論の間で、この2州だけとっても激しい対立があるのです。また、保守的な風土のアラバマ州が「公共の場でのマスク着用義務付け」に踏み切るなど、危機が深まる中では、生命重視の観点からの判断に戻る動きもあります。そうした各州の動向を見ても、アメリカ全体が経済活動の再開路線を越えて、より過激な集団免疫戦略に転じるということは、まず不可能です。

現在の選挙情勢は既に劣勢と言われているなかで、トランプ大統領としてはコロナ対策において、口先はともかく、政策としてこれ以上の「独自路線」を展開する余裕はなさそうです。先週末の11日になって、突然マスク姿の自身を公開したのも、そのあらわれだと思います。

【話題の記事】
・東京都、14日の新型コロナ新規感染143人 感染最少の5月23日以降累計3000人突破
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナの起源は7年前の中国雲南省の銅山か、武漢研究所が保管
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story