コラム

暗黒のクリスマス・イブ、米株安を招いたトランプ政権への3つの不信

2018年12月25日(火)16時40分
暗黒のクリスマス・イブ、米株安を招いたトランプ政権への3つの不信

クリスマス・イブのニューヨーク株式市場はオープン前から異様なムードに包まれた(写真は21日の終値の数字) Bryan Smith-REUTERS

<クリスマス・イブに株安が進行したのは、米中の貿易戦争を背景に、トランプ政権の経済運営に対する不信が重なったため>

12月24日のクリスマス・イブ、ニューヨーク株式市場はオープン前から異様なムードに包まれていました。まず先物が下がり、市場が開いたところでの株価の下げはキツくなかったのですが、その後はダラダラと株価が低迷し、不気味な下げを続けた結果、3%近く下げてダウ平均は650ポイント安で引けました。

下げが加速した要因としては、ディーラーの多くが休暇に入っており、AIによる自動的な損失確定の売りが出たためと思われます。ですが、下げは下げであり、一部には「暗黒のクリスマス・イブ」(CNBCなど)という表現も聞かれました。

この結果を受けた東京市場も、日経平均で1000円近い下げとなりました。一体、何が起きているのでしょうか?

アメリカはこのまま歳末休暇モードに入るので、論評は少ないのですが、その少ない論評の多くは「これはズバリ、トランプ株安だ」という見方になっています。

もちろん大前提となる大きな要因として、トランプ政権による中国との「貿易戦争」の出口が見えないという問題、また窮地に陥った政権が起死回生(?)の策としてイラン相手の軍事行動に出ることへの警戒感などがあります。マティス国防長官の辞任劇も見苦しい結末となり、国防長官、司法長官、首席補佐官が空席という政権の空洞化も、大きな懸念のタネになっています。

ですが、それだけではありません。今回の株安に関しては、直接引き金を引いた要因として具体的な3つの問題が指摘できます。

1つ目は、FRBのパウエル議長との確執です。パウエル議長は、景気の過熱とハードランディングを警戒しつつ、慎重に利上げを行っています。ところが、トランプ大統領は「利上げをすると株が下がる」という、まるで経済の素人のような思い込みを根拠に、パウエル議長の批判を繰り広げていました。

そのパウエル議長は、そうした雑音を排して今回、0.25%という小幅の利上げに踏み切ったのですが、これに対して大統領は激怒しているわけです。その上で、23日の日曜日には「パウエル議長を解任できないか?」という大統領の発言が表沙汰になりました。これは大変なことです。つまり、独立機関であるFRB(連銀)に対して大統領が介入しようとしたわけで、そのことが米国通貨の信用を毀損したのです。市場としては、もちろんネガティブ要因となったのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

ニュース速報

ワールド

イタリア、新型コロナ非常事態宣言を31日以降も継続

ビジネス

ドイツ経済、2022年初めにはコロナ危機前の水準に

ビジネス

ホンダ、中国CATLに出資 新エネ車用バッテリー共

ワールド

英国、70カ国・地域からの入国者隔離措置を撤廃

MAGAZINE

特集:香港の挽歌

2020-7・14号(7/ 7発売)

国家安全法で香港の自由と繁栄は終わり? 中国の次の狙いと民主派を待つ運命

人気ランキング

  • 1

    「金正恩敗訴」で韓国の損害賠償攻勢が始まる?

  • 2

    ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の「断種」ジェノサイド

  • 3

    やはり空気感染はあった? だとすれば対策の強化が必要

  • 4

    どこにも行かない台湾の「なんちゃってフライト」、…

  • 5

    「香港国家安全法」に反対の立場を取ったトルドーに…

  • 6

    中国・三峡ダムに「ブラックスワン」が迫る──決壊は…

  • 7

    「かくて私は教授を『クビ』になった」大月隆寛、地…

  • 8

    ヘビのような両生類アシナシイモリの謎 口腔の毒腺…

  • 9

    東京都、9日の新型コロナウイルス新規感染224人を確…

  • 10

    アフリカ、アジアだけでなく南米でも大繁殖──「地上…

  • 1

    「金正恩敗訴」で韓国の損害賠償攻勢が始まる?

  • 2

    中国・三峡ダムに「ブラックスワン」が迫る──決壊はあり得るのか

  • 3

    科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める

  • 4

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 5

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」…

  • 6

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 7

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 8

    東京都、3日の新型コロナ新規感染は124人 小池知事「…

  • 9

    英首相ジョンソン、香港市民の英市民権取得を確約 中…

  • 10

    ブラックホール爆弾から無限のエネルギーを取り出す…

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    「金正恩敗訴」で韓国の損害賠償攻勢が始まる?

  • 3

    中国・三峡ダムに「ブラックスワン」が迫る──決壊はあり得るのか

  • 4

    科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求…

  • 5

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪…

  • 6

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 7

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 8

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 9

    ポスト安倍レースで石破氏に勢い 二階幹事長が支持…

  • 10

    自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされ…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!