コラム

安倍政権、「安保法制」局面のサバイバル・シナリオとは?

2015年07月23日(木)18時10分

 こうした要素をすべて考えると、安倍政権のサバイバル・シナリオとしては、

(1)参議院の審議では、ひたすら低姿勢に徹する。

(2)その上で、9月16日以降の「60日ルール」を使って、衆院で「できれば静かに」再可決という手段に出る。

(3)そこで世論から大きな批判を浴びないように、ひたすら低姿勢を取り、内閣としての「誠実な姿勢をアピール」する。

(4)その「低姿勢」の見せ方としては、具体的にはまず「戦後70年」の対応で、国際社会から批判を浴びないようなソフトな対応に徹する。

(5)9月に日中首脳会談を実現させて、安保法制に関する中国側の厳しい批判を和らげ、同時に二国間の関係改善をアピールする。

(6)最終的に、「低姿勢」を決定付けるために「この内閣での改憲は行わない」という宣言も行う。安保法制が合憲なら改憲不要という点でロジック的には一貫させられるが、世論に対して譲歩したという印象も打ち出せるようにする。

 という対応になるのではないかと思います。これで第一次安倍政権が短命に終わった際に起きた「総崩れ」現象は避けられるのではないでしょうか?

 仮にこのような流れが出来て、安倍内閣が結果的に「右から真ん中にシフトしてくる」ことになり、同時に日米、日中の関係も良い方向に向かえば、政権としては経済を中心とした内政面での緊急課題に取り組めることになるはずです。

 反対に、参議院での審議にあたって「より強硬な」姿勢が出てしまうとか、「戦後70周年」への対応が過度に保守的になってアジア諸国だけでなくアメリカなどからも批判が出るとか、あるいは改憲にいつまでもこだわったりするようですと、第一次政権の末期と状況が酷似してくる危険は十分にあると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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