Picture Power

【写真特集】ウトヤ島乱射事件、惨劇の被害者との10年目の再会

ONE DAY IN HISTORY

Photographs by ANDREA GJESTVANG

2021年07月31日(土)16時30分

pputoya13.jpg

【ハンネ・ヘスト・ネス (当時20歳〈上〉/ 現在29歳〈下〉)】
ハンネはカフェ(下写真)にいたところで銃撃に遭った。左腕を撃たれ、左手の小指は砕かれ、頸椎はひどい損傷を受けた。親友は彼女の膝で死んでいった。

テロの後、彼女は4カ月半入院した。「病院で目覚め、小指がなくなっているのを見て、私は泣いた。指なしでどうやって生きたらいいの、と思った」と、ハンネは当時話していた。「そして、首を撃たれ、体が麻痺する可能性もあったと知った」

人物写真家になった彼女には現在、パートナーと2人の子供がいる。「事件の後、数年間は命の危険に怯えていた。(犯人が着ていた)警官の制服と、大きな音が怖かった。今はいちばん愛しているものを失うのが怖い。あの島で親友を亡くしたから」

pputoya14.jpg

pputoya15.jpg


pputoya16.jpg

【ナチア・チュヘティアニ (当時23歳〈下〉/ 現在33歳〈上〉)】
ジョージア(グルジア)出身のナチアはAUFのサマーキャンプに国際ゲストとして招かれ、銃撃テロに遭った。一緒に参加した親友は亡くなり、ナチアは事件後、喪に服するためオスロに引っ越した。「私と友人にとって、これがジョージアを出た初めての旅行。私はスカンジナビアの政治制度に関心があり、ずっと来たいと思っていた」と、彼女は当時話していた。

今はオスロに住み、労働の場における多様性や男女平等に関わる仕事をしている。結婚して息子が1人いる。「過去10年、7月22日に関する全てのものから距離を置くことにエネルギーを使ってきた。でも自分の経験に沈黙し、逃げることはできない。そうすれば自らの感情を否定すべきか絶えず葛藤し、前に進むことができない」

過去の自分にはこうアドバイスする。「あの日を思い出させる全ての物や人から逃げても、ウトヤ島で起こったことは変えられない。あなたがどこにいても、7月22日はあなたと共にある。あの出来事は自然災害ではなく、憎しみの行為だったとあなたは知るだろう。同じようなことが二度と起こらないようにする闘いにおいては、あなたの寛容さと献身がものをいう」

pputoya17.jpg


pputoya18.jpg

【エイリン・クリスティン・ケア (当時20歳〈下〉/ 現在29歳〈上〉)】
銃撃で受けた傷を見せてくれたエイリン(下)。キャンプでは年下の子たちを守ろうとして、腹部と腕、右膝、脇の4カ所を撃たれた。

現在は労働党の政治アドバイザーとして働き、AUFとの共同プロジェクトにも携わる。「4発撃たれたわりには、元気にやっている。体に不自由なところはない。ほとんどの人には無縁のことを経験したのだから、あの出来事の影響は確実に受けている。洞察力を与えてくれたし、自分について多くのことが分かった。少なくとも、命のあるうちに人生を楽しむことを学んだ」

過去の自分にはこうアドバイスする。「自分への信頼を失わないで。あなたは十分に善良で、能力があり、そして強い。必要なときにはあえて弱さを見せても、悲しんでもいい。あなたは理解を超えた悲痛な出来事を経験したのだから。今の瞬間を楽しみ、計画どおりにならなかったことがあっても考えないようにして」

pputoya19.jpg

Photographs by Andrea Gjestvang-Panos

<撮影:アンドレア・イェストバン>
ノルウェーのオスロとドイツのベルリンを拠点に活動するドキュメンタリー・フォトグラファー。銃撃テロの直後に撮影された写真シリーズはノルウェーで写真集として出版され、国外でも高い評価を得た。フォトエディターやアートギャラリーの展覧会のキュレーターとしても活躍している

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イエメン・フーシ派、イラン情勢巡り軍事介入の用意 

ビジネス

NY外為市場=ドル160円台、中東緊迫で「有事の買

ビジネス

米国株式市場=大幅続落、ダウ調整入り 中東情勢巡る

ワールド

イラン、米停戦案への回答保留 攻撃下の対話要求「容
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 5
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 6
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 7
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 8
    ニュースでよく聞く「東京外国為替市場」は、実際は…
  • 9
    アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える
  • 10
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story