コラム

「103万円の壁」見直しではなく「壁なし税制」を...金持ち優遇をなくす「3つの方法」

2025年02月02日(日)14時25分

その是正策と解釈できるものとして、既存の児童手当制度の拡充が近年、進んでいる。扶養控除の縮小は(国民民主党の反対もあって)実現できていないが、いいスタートだ。

全ての控除に関して同じ考え方が当てはまるだろう。今は、税率の高い人の方が大きな恩恵を受ける。他の救済策もあるが、少なくとも控除だけを見ると、配偶者がいる人、配偶者が亡くなった人、病気を抱えている人、どんな事情でも、低所得者は5%に所得税率を抑えるという形でしか応援してもらえない状態だ。

控除より、所得額と関係なく、定額の手当制度の方が公平で、目的達成への近道であろう。「控除なし!」は響きが悪いが「公平な手当を!」は悪くないでしょ?


まあ、政治家に任せるけど、現行制度を維持する場合はぜひ「低所得者を5%だけ応援します!」と、街頭演説などで公言してほしい。

ついでに、現行制度の控除にはだいたい所得制限がある。一定の収入を増えると控除や支援が受けられなくなる。これも「壁」だ。しかも、103万、106万、130万などだけではない。めったに聞かないけど、年収850万円以上にも複数の壁が立ちはだかっている。素直に稼がせてほしいと、思わない?

よっし、全部なくしちゃおう! 高所得者に、同じ定額の手当を与えて応援しよう。その方が、手続きがシンプルだし、どうせスロープ式の累進課税だから、彼らから税金でそれ以上を取り戻すから大丈夫でしょう。

では、まとめよう。
 ・壁のないスロープ式の税率を導入する
 ・医療保険や年金の二重構造をなくす
 ・控除をなくし、手当に変える

この3つの方法で、とっても公平かつシンプルな税制度になる。確定申告が簡単すぎて、税理士が暇になってしまうかもしれない。

しかも、1回できた制度の設定金額を物価上昇と連動させることができたら、今数年おきにやっている「所得いくらで税率何パーセントにする?」といった審議も部分的に楽になるから、議員も暇になる。

そして、複雑な説明を必要とするこんな面倒くさいコラムも書かなくて済むから、僕も暇になる。でも構わないよ。この件ではぜひ、働き控えさせてください。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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