コラム

令和フィーバー:使いづらいものの発表にお祭り騒ぎの愛すべき日本

2019年04月09日(火)14時10分
令和フィーバー:使いづらいものの発表にお祭り騒ぎの愛すべき日本

Franck Robichon/Pool via Reuters

<日本中が熱狂した新元号の狂騒曲。でもこの話題で盛り上がれる日本に、世界は本当は憧れている......かも>

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※4月16日号(4月9日発売)は「世界が見た『令和』」特集。新たな日本の針路を、世界はこう予測する。令和ニッポンに寄せられる期待と不安は――。寄稿:キャロル・グラック(コロンビア大学教授)、パックン(芸人)、ミンシン・ペイ(在米中国人学者)、ピーター・タスカ(評論家)、グレン・カール(元CIA工作員)。

2019年春。世界は激動している。アメリカではロバート・ムラー特別検察官の報告を受け大統領弾劾の議論が佳境を迎えている。イギリスはブレグジット(EU離脱)の期限が迫り、運命の岐路に立たされている。

ニュージーランドでは史上最悪の銃乱射事件の波紋が広がり続ける。インドとパキスタンの核保有国同士の緊張が高まっている。ベネズエラで大統領の座をめぐる争いがロシアvsアメリカという冷戦時代の対立構造を再現している。

そして日本では......新元号が決まった!

発表前の数日はこの話題で持ちきりだったが、テレビは特に盛り上がっていた。元号の決定過程を分かりやすく説明! 元号の歴史を徹底解説! 専門家が新元号を当てる!

漢字2文字に日本の電波はどれほど占領されていたのか。昼間にチャンネルを回すと民放各局の放送内容はだいたい「元号!」「元号!」「元号!」「韓国ドラマ再放送!」「元号!」という感じで見事に熱狂していた(というか「チャンネルを回す」って昭和だね)。

紙媒体も過熱していた。元号や年号を取り上げる本が複数出版され、新聞も雑誌も大きく取り上げた。関心なさそうな週刊誌もブームに乗った。ある中づり広告に「新元号を漏らす大臣」という見出しが「紅白を拒んだ南沙織」よりちょっとだけ小さく、「送料無料キャンペーン」と同じぐらいの文字サイズで載っていた。

そして、いよいよ発表の瞬間が来た。お茶の間でも街角の大型ビジョンの前でも、みんなが画面にクギ付け状態で国民的アイドルの菅義偉官房長官の登場を待っていた。「新しい元号は『れいわ』であります」と伝え、2分近く無言で額縁付きの「令和」をカメラに見せた。

どストレートな演出だが、視聴者は魅了された。NHK関東地区の11 時台のニュースの視聴率は19.3%。これは前4週の平均の10倍以上の超高視聴率だ。ちなみに、直後の気象情報の視聴率は21.7%だった。テレビのコンテンツとして「令和」もすごいけど、「晴れのち曇り」もなかなかだ。

発表後もフィーバーがいっそうヒートアップ。新聞の号外が奪い合いになった。元号の典拠となった万葉集が売り切れた。「令和〇〇」の登録ラッシュが始まった。ゴールデンボンバーが速攻で新曲「令和」のミュージックビデオをリリースした。

そして、宮城県で「元号が変わるから過払い保険金の返金処理を今日中にやる必要がある」というタイムリーな嘘で、高齢女性からキャッシュカードと暗証番号をだまし取る「令和詐欺」が発生した。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

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