コラム

ジャニー喜多川の性加害問題は日本人全員が「共犯者」である

2023年05月23日(火)21時24分

創業者ジャニー喜多川の性加害問題でかつてない逆風にさらされている Kim Kyung-HoonーREUTERS

<ジャニー喜多川「性加害」の問題について、メディアの責任は確かに大きい。でも、週刊文春が99年にキャンペーン報道をしても、日本人の多くは大して関心を持たず、深刻に捉えなかった。その意味で、すべての日本人はジャニー喜多川の罪を黙認し続けた共犯者である>

ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川(本名:喜多川擴)が生前行っていた子供へ性的虐待が、世の中を揺るがせている。

14日夜に藤島ジュリー景子社長が「世の中をお騒がせしていること」について謝罪。15日夜には櫻井翔がキャスターを務める「news zero」でも放送され、16日には新聞各紙が社説などで大きく報じ、元ジャニーズJr.の男性2人が国会で法整備を訴えた。17日にはNHK「クローズアップ現代」が取り上げ、19日には元ジャニーズの近藤真彦がジュリー社長の動画について「うそはだめ。正直に話して」などと述べた。21日には現役ジャニーズタレント最年長の東山紀之が「未成年に与えた心の傷、人生の影響は計り知れません」と朝の情報番組で語り、謝罪した。

ジャニーズ事務所の対応の不誠実さや問題点については、すでに多くの識者が指摘しているので、繰り返さない。個人的には、ジュリー社長が「知らなかった」で通したことは、後々かえって自分の首を絞めることになると思っている。今後、状況証拠や証言が積み重なってきた場合、致命的に信用を失うことになるからだ。

「戦後最大の性犯罪」はなぜ起きた?

この事件は、「戦後日本最大の性犯罪」とも言われている。本コラムでは、なぜここまで「ひどいこと」が起きてしまったのかを考えたい。

ネット上では、ようやく本腰を入れ始めた新聞やNHK(民放は現在もジャニーズ事務所に対し擁護的な姿勢を続けているため論外)に対し、呆れ果てる声が非常に多い。

「何という手のひら返し」
「黙殺し続けたおまえらも共犯者だろ」
「なぜ報じなかったのか、早く検証しろ」

という具合だ。もっともな意見だし、新聞各紙とNHKには是非とも社内の歴代OBやJ担と呼ばれるジャニーズ担当者に話を聞き、なぜBBCに指摘されるまで報じることができなかったのか、検証して欲しいと思う。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

IBM、コンフルエントを110億ドルで買収 AI需

ワールド

EU9カ国、「欧州製品の優先採用」に慎重姿勢 加盟

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story