コラム

「愛される中国」を目指す習近平の焦り──「中国が理解されていない」

2021年06月07日(月)14時55分
北京国立博物館の習近平の画像

北京国立博物館にある習近平の画像の前を通過する来場者(2021年3月3日) Tingshu Wang-REUTERS


・習近平国家主席は共産党幹部に、中国について国際的な理解を得られるよう、もっと努力することを指示した。

・そこには、トラブルを抱えた外国政府を非難罵倒するこれまでのやり方が逆効果という見方が共産党内部にも広がっていることがある。

・その一方で、「中国が理解されていない」という焦りは歴代政権が抱えてきたもので、習近平を待ち受けるハードルは高い。

「愛される中国」を目指す方針を中国政府が打ち出したことは、習近平も歴代政権と同じ課題に行きあたったことを意味する。

「中国が理解されていない」

中国の習近平主席は5月31日、共産党の最高意思決定機関、中央委員会政治局で、中国の国際的イメージの向上を厳命した。

国営の新華社通信によると、その主な内容は、

・コミュニケーション手段(マスメディアやSNSなどを指すと思われる)を発達させ、中国に関する国際的な言説に、中国の声を届かせること。

・中国共産党が中国人民の幸福のみを追求していることを海外に広く知らしめること。

・中国の活動を説明できる、中国自身の言説やナラティブを育成すること。

・信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージを作るために、中国文化の海外輸出を加速させること。

・中国が国際的な問題にこれまで以上に責任と役割を果たすこと。

・一極主義と覇権主義(アメリカを指す)に反対すること。

・人の往来を盛んにすることで中国を理解する友人の輪を大きくすること。

一言でまとめると、中国が海外から正確に理解されておらず、その力と立場にふさわしい認知を国際的に得られるよう、もっと努力しろというのだ。

非難罵倒の逆効果

これまでの中国をみると、こうした方針は異例にも映る。実際、習近平体制のもとでは外国への高圧的な姿勢が目立った。

特に近年、中国の報道官や外交官が、トラブルを抱えた国をTwitterなどで非難罵倒することも多い。貿易問題などで関係が悪化するオーストラリアに対して、アフガニスタンで子どもや羊にナイフを突きつけるオーストラリア兵のイメージで、日本に対して福島原発の汚染水の海中放流をめぐって葛飾北斎の浮世絵を用いて、それぞれ非難したことは、その典型だ。

こうした手法は「戦狼外交」と呼ばれる。しかし、その表現は、メッセージの内容を云々する以前に、いたずらに敵愾心を煽るだけのものになりやすい(フランスの新聞社なら「風刺は表現の自由」というかもしれないが)。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国BYD、高価格ブランド3車種発表 オフロード車

ビジネス

午後3時のドルは154円半ば、34年ぶり高値圏で神

ビジネス

JSR、JICによるTOBが成立

ビジネス

東電、柏崎刈羽原発7号機の燃料搬入作業を一時中断
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 6

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 7

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    【画像・動画】ウクライナ人の叡智を詰め込んだ国産…

  • 10

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 5

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story