コラム

【スリランカ】IS犯行声明は「次」の導火線になるか―パリから学べること

2019年04月25日(木)14時42分

パリでの2度のテロ事件の後、アルカイダ系とIS系による人目を引く活動のレースは各地でみられるようになった。2016年1月だけでも、ISがトルコのイスタンブール(12日)、インドネシアのジャカルタ(14日)で相次いでテロ事件を引き起こしたのに対して、アルカイダは15日にブルキナファソとソマリアでそれぞれ首都を一時占拠している。

スリランカのインパクト

ここでスリランカ同時多発テロを振り返ってみよう。300人以上の死者を出す惨事となったこの事件は、世界のメディアをスリランカに集めさせた。「NZクライストチャーチ事件への報復」といった、いかにもイスラーム過激派受けしそうな主張も飛び交うことは、イスラーム世界のなかでの関心も高めざるを得ない。

そのなかでISが犯行声明を出したことは、メディア露出レースでアルカイダに一歩リードしたことを意味する。シリアでの拠点を失い、勢力が失われたとみられてきたISは、これによって「活動がまだまだ活発」というメッセージを世界中に発信することができる。

しかし、そうであるがゆえに、アルカイダが静かにしていることは考えにくい。ただでさえアルカイダは今、オサマ・ビン・ラディンの息子ハムザ・ビン・ラディンがリーダーとして台頭しつつあり、一旦はISに奪われた「イスラーム過激派の本流」としての座を奪い返そうとしているタイミングにある

つまり、スリランカ同時多発テロの衝撃が強かったことは、アルカイダによる大規模テロを誘発しかねない危険性をはらんでいるのである。

アジアへの拡散はあるか

とはいえ、同時多発テロ事件の後、スリランカでは非常事態が宣言され、警戒が強化されており、この状況下でアルカイダ系が割って入ることは難しいとみられる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

GDP10─12月期は2四半期ぶりプラス、物価高で

ワールド

インタビュー:消費減税財源、外為特会「一つの候補」

ビジネス

EU衛星プロジェクト、価格と性能に競争力必要=ユー

ワールド

外国人旅行者のSNS審査案、上院議員がトランプ政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story