コラム

強まる縁故資本主義...石破政権が「減税に一貫して否定的」な理由

2025年06月10日(火)18時50分

アメリカは関税という増税とセットで減税政策を推進

トランプ政権からの圧力を受けて日本経済は厳しい局面を迎えている。これを国難と位置づけ、金融財政政策に対する姿勢を変えることになれば、先述のコラムで指摘したとおり、「禍転じて福となる」になりうるのである。

ただ、筆者が期待するシナリオの実現可能性はやはり低いままで、石破内閣は政策転換に踏み出さず、保守的な経済官僚が考案した対応に終始するとみられる。

国民民主党が「手取りを増やす」というフレーズで昨年の衆院選で議席を伸ばしたが、同党が掲げる所得税の減税は、予算成立に維新の会が与党に協力したことで実現には至らなかった。

夏場の参議院選挙が近づく中で、多くの野党が消費減税を掲げているが、石破内閣や自民党主流派は減税政策には一貫して否定的である。広範囲に国民の所得を底上げする減税政策は、個人消費を底上げする効果は大きいが、それは不要と認識しているのだろう。

トランプ政権そして米共和党は、関税賦課という増税を行う一方で、公約に沿ってチップ・残業代を非課税措置にするなどの家計への減税、そして企業への減税プランも下院を通過させた。早ければ2026年にも、これらの減税政策は実現する。

また、メルツ政権となったドイツでは、長年続いた均衡財政ルールを撤廃して、大幅な防衛費拡大とともに法人税の減税をセットで実現しつつある。

つまり、トランプ政権は関税政策が自傷政策であることを認識して家計・企業への配慮を行い、ドイツは拡張的な財政政策によってトランプ関税という逆風の中で、民間部門を支えて経済復調を目指している。これらの国とは対照的に、石破政権が拡張的な財政政策に踏み出して、家計企業の経済活動を支援することはないようである。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国の2月新規融資、予想以上に前月から急減 需要低

ビジネス

香港、種類株発行企業の上場規制緩和を提案 IPOに

ワールド

アングル:拡大する地政学リスク助言産業、イラン戦争

ビジネス

ホンダ、慶大・大阪大とAI技術開発で連携 講座と研
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story