コラム

トランプの関税発言で一喜一憂する株式市場の行方...米減税法案の「影響」を読む

2025年05月27日(火)19時10分
ドナルド・トランプ米大統領

ドナルド・トランプ米大統領は今も関税で米国経済が成長すると思い込んでいるようだ(5月26日、戦没将兵記念日の式典)

<関税賦課は増税政策。それを相殺すべく、5月22日には米下院で減税を含む予算法案が可決されたが...>

5月13日コラム「米中『電撃』合意...トランプ関税に振り回された株価はどこまで戻るのか」では、米中が「懲罰的な関税」の引き下げで合意したことで、米国を含め世界経済が失速するリスクが低下したと述べた。この合意後、米国株(S&P500)は5月19日に2月末以来の水準まで反発する場面があった。

しかし、20日以降、再び米国株は下落に転じたとみられる。

4月初旬の関税ショックで米国株が急落した後、早い時期に関税政策が軌道修正されることを予見した株式市場は、ほぼ「行って来い」となり年初の水準に戻ったと位置づけられる。ただ、最高値を超えるまで株高が続くには、関税政策のさらなる修正などで、米国経済の底堅い成長が続き企業業績の増益が維持されることが必要だろう。

トランプ米大統領は「極端な関税賦課は持続不可能」と理解しているようだが、従前から公約で掲げているような関税賦課で米国経済が成長するとの思い込みは変わらない、とみられる。

関税賦課は増税政策であり米国の企業・家計の負担を強いることに加えて、関税政策の帰趨が分からない中で、多くの企業が設備投資を控えるので経済成長にブレーキをかける。

トランプ大統領らは減税政策などによって、関税賦課の悪影響を相殺しようとしている。とりあえずは5月22日に下院において、減税を含めた予算法案が可決された。上院との協議を経て早ければ7月にも、2025年10月以降に拡張的な財政政策が始まる可能性が高まった。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みんなそうじゃないの?」 投稿した写真が話題に
  • 4
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    インド映画はなぜ踊るのか?...『ムトゥ 踊るマハラ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story