コラム

トランプの関税発言で一喜一憂する株式市場の行方...米減税法案の「影響」を読む

2025年05月27日(火)19時10分

対EU関税も発言が一貫していない中で

下院の予算案に含まれる飲食店でのチップ・残業代の非課税措置などの減税政策による成長押し上げ規模は、最大で2600億ドル規模(GDP0.9%に相当)とみられ、歳出削減よりも減税政策が先行して実現するだろう。短期的には経済成長率を押し上げる。

それでも、トランプ大統領が公約に掲げている大幅な関税政策が実現すれば、2026年初まで減税よりも関税賦課の規模が大きく上回るので、当面は経済活動にブレーキがかかる状況は変わらないだろう。

5月23日にトランプ大統領はEUに対して50%の関税率を6月1日から賦課する考えを表明したが、その後、EUへの関税発動を1カ月延期するなど、発言は一貫していない。

交渉が進まないEUへの圧力を強めたのだろうが、いずれにしても、大幅な関税政策の発動によって、2025年後半に米国を含めて世界経済全体が一段と停滞する状況は変わらないだろう。トランプ大統領は自らの発言で株式市場を上下させることで悦に浸っているのだろうが、「米国を自傷する」政策を続けていることに気づいていないようだ。

トランプ政権が振りかざす政策の弊害を日本などが最小化するには、①米政府との交渉で関税賦課を回避する(関税率引き下げを実現する)、②経済成長を高める政策を自ら発動する、の双方が必要だろう。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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