コラム

トランプ政権の関税引き上げが日本株の脅威になる理由(ただし、間接的に)

2025年02月06日(木)10時40分

最も経済停滞が深刻になる大国が中国である理由

関税引き上げは米国自身にもインフレショックをもたらすので、経済成長にブレーキがかかる。ただ、トランプ大統領やスコット・ベッセント財務長官は、減税政策によるマクロ安定化政策を強める方針を明確にしている。

こうした政策対応とセットで米国は関税政策を繰り出すため、米国経済の相対的な優位は揺るがないだろう。関税引き上げで一時的にインフレ率が上がったとしても、他国へのダメージがより大きく米国が優位に立つならば、トランプ大統領は成果と考えるのではないか。

言うまでもないが、トランプ政権の関税引き上げは、多くの国にとって経済合理性を欠き、かつ理不尽な政策である。ただ、それが現実なのだから、大統領が交代した覇権国である米国と上手く付き合うしかないし、これに対処できる政治リーダーのみが自国の経済パフォーマンスを高められる、ということだろう。

1月8日コラム(中国経済の失速・デフレ化が世界金融市場の「無視できないリスク」になる)では、米国の最大のターゲットとみられる中国経済の下振れリスクが大きいと述べた。実際には経済大国であれば、関税引き上げを吞まされても、自国の経済政策によってダメージを抑制することは十分できる。

ただ、現在の共産党指導部の姿勢を踏まえると、中国の経済政策が不十分にしか実現しないため、トランプ2.0の世界で最も経済停滞が深刻になる大国は中国だと筆者は予想している。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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