コラム

トランプ政権の関税引き上げが日本株の脅威になる理由(ただし、間接的に)

2025年02月06日(木)10時40分

石破政権は消費刺激につながる減税政策に後ろ向き

2月7日に首脳会談を行う予定の石破茂首相が、トランプ大統領とどう向き合うかは不明である。実際には、日本の輸出品が関税のターゲットになることよりも(自動車に対しては関税が発動されるだろう)、日本への経済的なダメージは、中国経済の停滞を通じて現れるだろう。

本来、日本の経済規模であれば、自国で適切な対応を繰り出すことで、米国の政策の影響は最小限に抑制することができる。しかし、石破政権は消費刺激につながる減税政策に対して依然後ろ向きで、「地方創生」という名の下で増税を伴う権益者への分配政策を重視しているようだ。

さらに1月後半に日本銀行は0.5%への追加利上げを行ったが、経済成長にブレーキがかかる中での利上げは、政策ミスとなる可能性が高い。国内を見渡すと、日本株市場に期待できる要因は残念ながらほとんど見当たらない。

今年半ばに参議院選挙を控える中で国内政治情勢が大きく変わるシナリオは想定されるが、このままであれば間接的にトランプ関税引き上げによる被害を日本経済は受けるだろう。昨年夏場からレンジが続く日本株市場が、再び高値をトライするのは難しい、と筆者は予想している。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

【お知らせ】
本コラム筆者・村上尚己氏の新刊『円安の何が悪いのか?』好評発売中!

円安の何が悪いのか?
円安の何が悪いのか?
 村上尚己 著
 フォレスト新書

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ4月石油輸出、9カ月ぶり低水準 シェブロ

ワールド

米国の対中貿易制限リストに間違い散見、人員不足で確

ワールド

ケネディ米厚生長官、ワクチン巡り誤解招く発言繰り返

ビジネス

欧州不動産販売、第1四半期11%減 トランプ関税影
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story