コラム

中国経済の失速・デフレ化が世界金融市場の「無視できないリスク」になる

2025年01月08日(水)15時04分
習近平

中国経済は1990年代半ばの日本と同様のデフレ局面に入りつつある Adriano Machado-REUTERS

<米中の関税引き上げ合戦に注目が集まるが、そもそも中国にはデフレと低成長が続きそうな「国内事情」もある。習近平国家主席が「デフレの何がそんなに悪いのか」と語ったとも報じられるが...>

昨年末のコラム(【2025年経済展望】期待しづらい中国、外部環境に脆弱な日本、2%成長が続く米国)では2025年の世界経済について展望した。トランプ2.0が始動する米経済は引き続き2%を超える堅調な経済成長が続くため、世界経済全体は安定が続くと筆者は見込んでいる。

一方で、昨年経済成長が冴えなかった経済大国(中国、日本、ドイツ)については、2025年の各国の金融財政政策の出来が大きく左右する。これらの国の中で、トランプ次期政権から関税引き上げを迫られる中国の下振れリスクは最も大きいだろう。

2024年の中国経済を振り返ると、5%前後が政府目標だったが、公式発表の実質GDP成長率は4-6月から4%台半ばで推移した。目標から下振れたが、「まあまあの経済成長」とも言えなくはない。

もっとも、中国のGDP統計は発表時期がかなり早く、そして地方都市からの報告が積み上げられていることなどから、「過大推計」になっているとみられる。

実際に、若年世代(16-24歳)の失業率(2024年10月)は17.1%と、コロナ禍から若年失業率は上昇したままで、若年失業問題は引き続き深刻なままである。

また、コロナ禍による経済変動を経ても、コアベースの消費者物価上昇率はゼロ%台の低位で推移している。世界中が2022年からインフレ上昇に見舞われる中で、同国のインフレが変動しなかったことは、同国の総需要の縮小によって需給バランスがかなり緩和していることを示唆している。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story