選挙に新たな視点を与える映画『センキョナンデス』の2つの見どころ
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<良質なドキュメンタリーかと問われれば否定するが、面白いかとか見る価値はあるかと問われれば、ためらうことなく肯定する>
大学で自主制作8ミリ映画を撮っていたころ、商業映画を撮るならば35ミリフィルムが前提だった。16ミリという選択もあったが、ほとんどの映画館は16ミリ映写機を備えていないし、フィルム代や現像費は35ミリと同様に高価すぎる。
テレビも黎明期は映画と同じようにフィルムだった。でもフィルムは撮ってから現像という手間がある。さらに、1ロールで撮影できる時間は3分弱で、ロールチェンジの間は撮影を中断せざるを得ない。
世界初のVTRが開発された1956年以降、テレビはビデオ放送の時代になり、テレビの本質でもある機動性と駆動性を獲得する。
82年には業務用VTR「ベータカム」が発表されカメラとレコーダーが一体化したことで、ロケの駆動性はさらに大きく向上した。僕のテレビ時代は、まさしくこのベータカムの全盛期だ。
やがて時代はアナログからデジタルへと変わり、地下鉄サリン事件があった95年、ソニーがDV規格による世界初のデジタルビデオカメラレコーダーDCR-VX1000を発表し、僕は最初の映画『A』を撮ることができた。
ただし『A』を発表した98年、映画はまだフィルムが前提だった。この年のキネマ旬報ベスト10ランキングで、数人の審査員がビデオで撮影した『A』に対して、そもそもこれは映画といえるのだろうか、と否定的にコメントしている。
今は、テレビも映画もビデオが前提だ。スマホで撮った映像を、パソコンに向かいながら1人で編集することも可能になった。しかもネットで公開できるのだ。
デジタル化の恩恵は、ドラマよりもドキュメンタリーに大きく働いたように思う。例えば近年の香港だけでも、『Blue Island 憂鬱の島』『少年たちの時代革命』『理大囲城』など、多くの市民や学生がスマホで撮った映像を使った作品が、いくつも制作されている。一昔前ならば考えられない。8ミリで映画を撮っていた時代の自分に言いたい。あっという間にとんでもない時代になるよと。
『劇場版 センキョナンデス』は、ラッパーのダースレイダーと時事芸人のプチ鹿島がYouTubeで配信していた番組のスピンオフとして、2021年の衆院選と22年の参院選候補者に突撃取材した素材を大島新がプロデュースして制作された。
見どころを2つ挙げる。プチ鹿島が香川県の四国新聞社に乗り込み、ジャーナリズムの在り方で論戦を挑むシーン。なぜ選挙取材なのにメディアを直撃するのか。見れば分かる。そしてもう1つが、大阪で取材中に起きた安倍晋三元首相銃撃事件。記録される現在進行形。衝撃を受ける2人。そしてメディアから囲み取材を受けていた候補者の慟哭(どうこく)。
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