コラム

中華の回転テーブルとこのアパレル、中国人が作ったのはどっち?

2018年04月02日(月)17時16分

私が来日した1988年時点では日本語で得られる国際情報は中国語の数十倍はあったが、2018年現在では完全に逆転している。日本人はもはや英語ができなければ世界の生の情報を知ることはできないが、中国人は中国語だけでも相当量をカバーできてしまう。かつての日本のように、だ。

中国人による海外文化の学びとして興味深い事例がある。それが漢服の復活だ。漢服とはもともと漢代の衣服を意味する言葉だったが、ここ十数年余りは漢民族意識の高まりを受け、漢民族の民族衣装という意味でも用いられるようになった。

ただし、漢民族の民族衣装といっても時代ごとに千差万別で定義することなどできようもない。そこで多くのデザイナーが「私の考える民族衣装」を作っていくわけだが、その際に日本の和服という海外文化を参考にしたケースが多い。

内向きになりがちな民族意識の産物を、海外文化を利用して創り上げようという逆転現象が起こっているわけだ。さらに、洋服と合う漢服など不思議なバリエーションが次々と作られている。

湖南省長沙市の漢服メーカー、花笙記の服を見てほしい(ウェブサイトはこちら)。ダウンジャケット、スカジャン、スウェット、パーカーなどなど、現代風にアレンジされた漢服が目を引く。

変化を恐れずに海外文化を取り入れている。原型をとどめぬほどに変更・改造したものを日本のネットスラングでは「魔改造」と言うらしいが、花笙記はまさに「魔改造」漢服だ。

この花笙記だが、現在では日本進出を計画しているという。中国の伝統と和服、洋服を足し合わせた「魔改造」アパレルは、果たして日本で成功するのだろうか。

それは未知数だが、このともかくひたすらにチャレンジングな精神に日本人が感化され、海外文化をリフォームする伝統――「魔改造」の力――を取り戻してほしい。そう願っている。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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