コラム

中華の回転テーブルとこのアパレル、中国人が作ったのはどっち?

2018年04月02日(月)17時16分

左は中華レストランの回転テーブル(Tarzan9280-iStock)、右は花笙記の現代風にアレンジされた漢服(https://huashengji.tmall.com/より)

<「海外の文化を真摯に学び、発展させる力」は長らく日本の伝統だったが、実は今、そのお株を中国が奪っている>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

皆さんは中華レストランというとどんなイメージをお持ちだろうか。やはり印象的なのは回転テーブル? 大皿料理を簡単にシェアできる素晴らしい発明だ。

この回転テーブルは中国のレストランでも一般的だ。私はてっきり中国人の発明だと思い込んでいたのだが、実は日本で発明されたものだった。

東京にある老舗結婚式場の目黒雅叙園が誕生の地だという。創業者の細川力蔵が1932年に発案した。それが日本中に広がり、中国にも逆輸入され、今では世界中で使われているというわけだ。

ラーメンも進化させた日本の強みはどこへ?

思うに、日本人は海外の文化を取り入れて、進化させる能力に長けている。古代においては中国から政治制度、文化、技術を輸入した。明治維新以後は西洋の技術を学び、世界に名だたる先進国へと成長した。

そんな大上段な話をしなくとも、身近な事例もたくさんある。

例えばラーメンだ。もともと中国料理だったはずのラーメンだが、今や日本の国民食へと成長した。中国人の間でも大人気で、東京の有名ラーメン屋に行列を作る中国人観光客も少なくない。日本のラーメンはもはや別物だと中国人も認めているのだ。

「海外の文化を真摯に学び、発展させる力」――この日本の誇るべき伝統をもっと発揮してもらいたい。

この伝統は、世界のバリューチェーンを活用し、新たな付加価値を生み出していくグローバリゼーションの時代において、何よりの強みとなるはずだ。グローバリゼーションは日本にとって大きなチャンスである。

ところが最近の日本はどうも内向きで、このチャンスを生かせていない。若者たちは留学どころか海外旅行にすら消極的。外国人移民受け入れの議論は始まりすらしない。日本の伝統を忘れてしまったのかと歯がゆさを感じる。

変化を恐れずに海外文化を取り入れ始めた中国

逆に今、海外文化の吸収に積極的なのが中国だ。「中華」(世界の中心)を自称し、「わが国は地大物博(広大な大地を持ち豊富な物資がある)であり、海外の文化は必要ない」と尊大だった中国が、日本以上に真摯に世界を学んでいるのだ。

1980年代から世界各地に大量の留学生を送り出してきたが、今やそうした人々が帰国し、世界の文化と知識を中国に伝える一大潮流ができている。例えば書店でも、日本では翻訳書の数は減る一方のようだが、中国では世界各国の有用な書籍が瞬く間に翻訳されて店頭に並ぶ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story