<「正しい知識があれば、確実に防げる」と犯罪学者の小宮信夫氏は述べる。侵入をはじめ犯罪被害に遭いやすい住宅の特徴とは>

「年末年始は空き巣が多い」とよく言われるが、本当にそうなのだろうか。いろいろ統計を集めてみると、どうも空き巣が多いのは秋と春のようだ。もっとも、年末年始は、帰省や旅行で家を長く留守にすることも多いので、不安になるのは当然である。不安になることは悪いことではない。それによって、リスク・マネジメントのスイッチがオンになるからだ。

家の守りを固めるには、正しい知識が必要である。正しい知識さえあれば、犯罪は確実に防げる。空き巣も例外ではない。その知識とは「犯罪機会論に基づくリスク・マネジメント」だ。しかし日本では「犯罪原因論に基づくクライシス・マネジメント」がまかり通っている。そのため、防げる犯罪も防げていない。

「入りやすく見えにくい場所」が危ない

犯罪原因論は「なぜあの人が」というアプローチから動機をなくそうとするが、犯罪機会論は「なぜここで」というアプローチからチャンスをなくそうとする。つまり、動機があっても、犯行のコストやリスクが高くリターンが低ければ、犯罪は実行されないと考えるわけだ。

犯罪機会論によって、事件が起きやすい場所は「入りやすく見えにくい場所」であることが、すでに分かっている。したがって、犯罪が起きにくいのはその逆だ。住宅についても、「入りにくく見えやすい場所」にする必要がある。

とりわけ、マンションなどの共同住宅(集合住宅)は、欧米諸国で犯罪の温床となったことがあるので、その失敗を教訓にすることが望まれる。

かつて欧米諸国では、密集した劣悪な住宅群を取り除いて、巨大な高層住宅団地を建設する政策が採られていた。それは、太陽・空間・緑を十分に確保するためのものであったが、結果としてもたらされたのは犯罪の激増であった。

その典型が、アメリカのセントルイスに建てられたプルーイット・アイゴー団地だ。この公営団地には、11階建住宅が33棟建設されたが、広大な屋外オープンスペースや孤立した共用ランドリールームなど、「入りやすく見えにくい場所」が多く存在した。そのため、犯罪が多発し、退去者が続出した。団地は、空き家率7割のゴーストタウンと化し、建築後20年足らずで、爆破によって取り壊されてしまった。

物理的なバリア、心理的なバリアを